構造実在論 情報理論 進化的真理論 進化論的認識論-6


ここからは擁護ではなく、解体に入ります。

三層モデル:

  1. 宇宙は構造的である(構造実在論)
  2. 構造は情報的に圧縮可能である(情報理論)
  3. それを扱う主体が進化した(進化的真理論)

一見きれいに整合しています。
しかし内部にはいくつかの深い緊張があります。


Ⅰ 構造実在論と情報理論の緊張

問題1:構造は「ある」のか、それとも「圧縮の結果」か?

構造実在論は言う:

構造は世界の側に実在する。

しかし情報理論は言う:

構造とはデータの圧縮可能性である。

ここで決定的な問いが生じます。

圧縮可能性は、

  • 世界に属する性質か?
  • それとも記述体系に依存するか?

圧縮は常に符号化スキームに依存します。
何を規則と見なすかは、記述者の選択に依存する。

すると、

構造は世界固有のものなのか、
それとも観測者相対的なのか?

三層モデルはここを曖昧にしている。


Ⅱ 進化的真理論の自己破壊性

進化的真理論は言う:

認識は生存に有利なモデルを選択した結果である。

しかしここに致命的な問題がある。

もし認識が適応の産物にすぎないなら、

  • 真理概念は適応的安定性に還元される
  • 構造実在論も適応戦略にすぎない

つまり、

三層モデル全体が
「進化的安定な幻想」である可能性を排除できない。

これは自己言及的崩壊です。

進化的自然主義はしばしば

自分自身の信頼性を弱体化する

という問題に直面します。


Ⅲ 説明の循環

三層は一見、下から上への説明に見えます。

1 → 2 → 3

しかし実際は循環しています。

  • 宇宙が構造的だと知るのは主体
  • 圧縮可能性を定義するのも主体
  • 進化を記述する理論も主体の構築物

つまり、

主体を説明する理論が、主体の認識能力を前提にしている。

これは弱い循環ですが、哲学的には重大です。


Ⅳ 数学の「過剰性」問題

数学は自然に適用されない分野を大量に含みます。

例:

  • 無限次元空間
  • 高次圏論
  • 大きな基数公理

これらは進化的適応とは無関係に見える。

もし三層モデルが正しいなら、

なぜ適応に不要な数学が存在するのか?

この「過剰性」はプラトニズムに有利です。

三層モデルは、

  • 進化で説明するには広すぎる
  • 構造で説明するには抽象すぎる

という緊張を抱えます。


Ⅴ 意味の地位の不安定さ

三層モデルは構造と情報を強調しますが、

意味や価値はどこに位置づけられるのか?

  • 構造は記述できる
  • 圧縮は計算できる
  • 進化は説明できる

しかし

「なぜそれが意味を持つのか?」

は別問題です。

もし意味が主観的投影なら、
モデルは反実在論に滑る。

もし意味が構造に内在するなら、
価値実在論を採用する必要がある。

三層モデルはここで中途半端になります。


Ⅵ 自己認識テーゼの内部崩壊

三層を統合すると

宇宙は自己を理解する構造を生んだ

という図式になります。

しかし、

  • 宇宙全体に主体性はない
  • 局所的主体は進化的偶然

ならば、

「宇宙の自己認識」は因果的偶然の副産物

にすぎない。

すると壮大な統一像は、
単なるレトリックになります。


Ⅶ 最大の矛盾:客観性と適応性の衝突

三層モデルは同時にこう言っています:

  1. 数学は世界の構造を捉える(客観性)
  2. 認識は適応的産物である(機能性)

しかし適応は真理を保証しない。

生存に十分な近似で足りる。

それなら、

なぜ高度に抽象的な数学が宇宙の深部に一致するのか?

この一致は、

  • 偶然か
  • 宇宙の深い合理性か
  • それとも認識構造と宇宙構造の同型性か

三層モデルは決定できない。


結論:三層モデルは安定していない

内部緊張は主に四つ:

  1. 構造の客観性 vs 圧縮の相対性
  2. 進化的説明の自己破壊性
  3. 数学の過剰性
  4. 客観性と適応性の両立問題

このモデルは魅力的ですが、
まだ存在論的に未完成です。


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