「時間遅延モデル」-12

これまで、脳内世界モデルについて、照合・訂正・精緻化機能などについて説明してきた。
ここで、精神症状の一部を説明する。自我の能動性や自己所属感が失われる状態として、
させられ体験、自生思考、強迫性体験、離人感、思考吹入、思考奪取、感情吹入、対話型幻聴、命令型幻聴、被影響体験、体系的妄想、世界没落体験、宇宙的自己化などについて、それぞれの性質を観察した。
そしてこれらの病態を説明する仮説について、いくつか紹介した。

私が長年考えている、「時間遅延モデル」について説明したい。

脳の中には、この世界をモデルとして縮小した「脳内世界モデル」がある。
通じ用、脳は、運動系によって世界に働きかける。そしてその結果を、感覚器を通して受け取る。
感覚器からの情報は、「脳内世界モデル」に送られ、そこで、世界モデルは正しいモデルになっているか、検証され、必要に応じて訂正される。

一方、この「脳内世界モデル」が存在するのは、脳内シミュレーションをするためである。
実際に、運動系を通して世界に働きかける前に、どのように運動系を動かしたら、最も望ましい結果が得られるか、運動系の動かし方についてシミュレーションをする。「脳内世界モデル」は、それぞれの運動シミュレーションについて、結果を返す。その結果を評価して、どの運動がよいか選択する。
そのようにして選択した運動を実行する。例えば、ピッチャーとして、どのような加減で投げるかを決める。また狩猟の場面で、どのくらいの力加減でどこを狙って、獲物に打撃を加えるかを決める。
獲物に打撃を加える場合を考えると、(1)脳内シミュレーションの結果、行動を選択する。(2)実行する。実行した信号は、A.運動系を通して外界に向かう、B.「脳内世界モデル」に対して、運動刺激をシミュレーションとして送るの、2つに同時に分岐する。(3)結果を受け取る。これも二つあって、A.現実世界で獲物はどうなったか、感覚器を通じて、情報を取得する。また、B.「脳内世界モデル」からの返答として、シミュレーション結果を受け取る。(4)ここで、AからとBからの結果を照合する。うまく一致していれば、「脳内世界モデル」は十分に精密である。一致していなければ、訂正する必要がある。(5)必要なら訂正する。
このような、(1)から(5)のプロセスを繰り返していると考えられる。

ここで、脳の「照合」をつかさどる部分は、「A.感覚器を通しての現実世界からの反応信号」と「B.脳内世界モデルでのシミュレーションの結果としての信号」を受け取り、比較照合する。

ここでは、一致度の検証もなされる。それが脳内世界モデルの精緻さを保証する。しかし一方で、Aからの信号と、Bからの信号の、「照合」部位への到着時間を測定している。ここが私の主張である。

・能動感と被動感
もし、先にBが到着して、そののちに、Aが到着するならば、そこには「能動感」が発生する。思い通りになった、と思う。
逆に、先にAが到着して、そののちに、Bが到着するならば、そこには「被動感」が発生する。させられたという感覚が生じる。
これは時間差ら寄って、より強い能動感であったり、より強い被動感であったりする。

・自己所属感と外部所属感
これも、Bが先でAが後の場合は、自己所属感になる。
Aが先でBが後の場合は、外部所属感になる。幻聴は他者に属するものである。一方、強迫性体験は、あくまで自己所属感は保たれている。

AとBが同時であれば、自生思考になる。

総じて、Bが先で、Aが後になれば、正常であり、Aが先でBが後になれば、異常という事態になる。

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