存在=予測と誤差の緊張 脳内世界モデル-7

これまで構築してきた精度揺らぎモデルをさらに深化させ、

  1. ドーパミン=精度符号化の神経実装
  2. Manic-first hypothesis との接続
  3. 予測処理 × 実存哲学
  4. CBTの再定式化

を統合的に提示します。


Ⅰ.ドーパミン=精度符号化の神経実装

予測処理理論では「精度」は重みづけパラメータである。
では神経レベルでは何がそれを担うのか。

この点で重要なのがドーパミンである。

1.自由エネルギー原理との接続

自由エネルギー原理(Karl Friston)では、予測誤差の精度推定が中心的役割を果たす。

ドーパミンは、特に以下に関与すると考えられる:

  • 報酬予測誤差
  • 動機づけサリエンス
  • 行動活性化

すなわち、

ドーパミン=予測誤差の精度符号化シグナル

と解釈できる。


2.躁状態との接続

躁状態では:

  • ドーパミン活動亢進
  • 報酬予測誤差の過大評価
  • 探索温度上昇

数理的には:

[
Precision_{reward} \uparrow
]

その結果:

  • リスク軽視
  • 行動閾値低下
  • 目標追求の加速

これは探索モードの神経実装と整合する。


3.抑うつとの接続

抑うつでは:

  • ドーパミン機能低下
  • 正の誤差の低精度化

結果:

[
Expected\ reward \downarrow
]

行動停止が生じる。


4.統合失調症との違い

統合失調症では、

  • ドーパミンの異常放出
  • 無関連刺激へのサリエンス付与

これは

[
Precision_{irrelevant\ error} \uparrow
]

と理解できる。

躁では「報酬」へ、
統合失調症では「意味」へ、
抑うつでは「損失」へ、

精度が偏倚する。


Ⅱ.Manic-first hypothesis との接続

Manic-first hypothesis は、

双極性障害の基盤は躁的過程にあり、抑うつは二次的である

という仮説である。

この立場は、探索暴走モデルと整合する。


1.進化的観点

進化的に有利なのは:

  • 探索
  • リーダーシップ
  • リスクテイク

躁的傾向は適応的側面を持つ。

抑うつは、

  • 探索失敗後の誤差固定
  • エネルギー節約モード

として生じる可能性がある。


2.精度揺らぎモデルでの再解釈

躁相:

[
Precision_{reward} \uparrow
]

探索過剰
→ 失敗
→ 負の誤差固定

抑うつ相:

[
Precision_{negative} \uparrow
]

躁が原発で、抑うつが帰結。

これはManic-first仮説と理論的整合を持つ。


Ⅲ.予測処理 × 実存哲学

ここで理論を存在論的水準に拡張する。

予測処理理論では、世界は常に不確実であり、
生は誤差を抱えた状態で進む。

この構造は、

Martin Heidegger の「被投性」に近い。


1.存在=予測と誤差の緊張

人間は:

  • 未来を予測し
  • 誤差に直面し
  • 意味を再構成する

躁では:

未来が過剰に開かれる。

抑うつでは:

未来が閉ざされる。

統合失調症では:

世界の構造自体が不安定化する。


2.意味形成の暴走と崩壊

妄想は意味の過剰形成、
抑うつは意味の収縮、
躁は意味の拡張。

実存哲学はこれを、

  • 不安
  • 可能性
  • 限界

の問題として扱う。


Ⅳ.CBTの再定式化(予測処理モデル)

認知行動療法(CBT)は、

自動思考を検討し、信念を修正する。

予測処理理論で再定義すると:

CBT = 精度再配分訓練


1.躁への介入

目標:

  • 報酬精度の過剰抑制
  • リスク精度の回復

方法:

  • 行動モニタリング
  • 予測と結果の比較
  • 誤差フィードバック強化

2.抑うつへの介入

目標:

  • 負の誤差固定の緩和
  • 正の誤差の精度上昇

方法:

  • 行動活性化
  • 小成功体験の蓄積
  • 予測更新の可視化

3.統合失調症への介入

目標:

  • ノイズ精度の低減
  • 上位信念の柔軟化

方法:

  • 現実検討
  • メタ認知訓練
  • 予測可能環境の構築

Ⅴ.総合理論図

  • ドーパミン=精度符号化
  • 躁=探索暴走
  • 抑うつ=誤差固定
  • 統合失調症=階層崩壊
  • 双極性=精度振動
  • Schizoaffective=横断振動

精神病理は、精度配分の異常で統一的に理解可能である。


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