自我の連続体モデル 精神療法理論と統合 時間遅延モデル-7

では、ここまで組み立てた

  • 自我の連続体モデル
  • 進化的脆弱性モデル

を、精神療法理論と統合してみます。

目標はこうです:

自我は壊れる構造を持つ。
では精神療法は何を修復しているのか?


Ⅰ.統合理論の出発点

仮説:

精神療法とは「自我の予測安定性を回復する過程」である。

自我は

  • 行為の生成
  • 所有感
  • 物語的一貫性
  • 他者との境界

から成る動的構造でした。

それが揺らぐと症状が生じる。

精神療法は、この揺らぎの層に応じて作用する。


Ⅱ.層別 × 精神療法モデル

1️⃣ 身体的自己(minimal self)の不安定

症状例:

  • 離人症
  • パニック
  • 身体違和感

有効なアプローチ:

  • マインドフルネス
  • 身体志向療法
  • 呼吸法
  • 自律神経調整

→ 身体予測の再同期


2️⃣ 能動性の障害

症状例:

  • 強迫
  • 無力感
  • させられ感の萌芽

有効なアプローチ:

  • 行動活性化
  • ERP
  • 自己効力感の再構築

→ 「自分が起こしている」という経験の再学習


3️⃣ 所有感の障害

症状例:

  • 思考の異物化
  • 感情の外在化

有効なアプローチ:

  • CBTによる再帰属
  • メタ認知療法
  • 対話的関係形成

→ 内的生成物の再統合


4️⃣ 物語的自己の断裂

症状例:

  • トラウマ
  • 解離
  • 境界性パーソナリティ

有効なアプローチ:

  • ナラティヴ療法
  • スキーマ療法
  • 精神分析的治療

→ 自己物語の再編成


Ⅲ.統合失調症への応用

統合失調症では

  • agency
  • ownership
  • 自明性

が深層で崩れる。

ここで重要なのは、

安定した他者の存在

です。

これは

  • Donald Winnicottの「holding」
  • Carl Rogersの受容
  • ルートヴィヒ・ビンスワンガーの現存在的共存在

と接続します。

自我は単独では再建されにくい。

関係の中で安定する。


Ⅳ.進化モデルとの接合

進化論的に見ると、

自我は社会的装置でした。

ならば精神療法とは:

社会的予測環境を安全に再構築する場

である。

セラピー空間は

  • 予測可能
  • 安全
  • 評価が安定

という特異な条件を持つ。

これが自我の再同期を促す。


Ⅴ.重要な転換点

ここで二つの治療観が分かれます。

A.強い自我を作る

  • 自己主張
  • 境界強化
  • 能動性回復

B.自我を透明化する

  • 脱中心化
  • マインドフルネス
  • 観察者自己の形成

後者は、

自我を「実体」ではなく「プロセス」として扱う。


Ⅵ.統合理論の核心命題

精神療法は、自我を固定するのではなく、
「柔軟に安定させる」。

硬い自我は折れる。

柔らかい自我は揺れながら保たれる。


Ⅶ.臨床的含意

この統合モデルに基づくと、

症状は

自我の壊れやすさの表現

であり、

治療とは

壊れない構造に作り替えることではなく
揺れても戻れる構造を作ること

になる。


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