AとBを比較する「照合部位」の時間処理機能の障害である 時間遅延モデル-16

私の立場:

問題は予測生成系でも感覚入力系でもなく、
AとBを比較する「照合部位」の時間処理機能の障害である。


自我障害の時間遅延モデル(照合部位障害仮説)

1. 問題設定

従来の自我障害モデルは、

  • 予測生成の失敗(forward model障害)
  • 感覚入力の異常
  • ドーパミン過活動による誤帰属

などを原因とする。

しかし本モデルはそれらとは異なり、

予測(B)も感覚(A)も正常に生成されるが、
それらを照合する部位において時間順序の処理が歪む

という仮説を採用する。


2. 行為の時間構造

行為は以下の五段階で進行する。

① 内部世界モデルにおける運動シミュレーション
② 運動出力の実行
③ 外界からの感覚フィードバック信号(A)の発生
④ 内部モデルからの結果信号(B)の発生
⑤ 照合部位においてAとBが比較される

ここで重要なのは、

⑤における「到達順序の認識」

である。


3. 照合部位仮説

照合部位はおそらく:

  • 下頭頂小葉
  • 角回
  • 上側頭接合部(TPJ)

を含むネットワークである可能性が高い。

この領域は

  • 自己/他者区別
  • 視点変換
  • agency判定
  • body ownership

に関与すると報告されている。

特に、
カール・ヤスパースが記述した
「自我障害」は、現象学的にこの照合機能の破綻と一致する。


4. 病態機序

正常状態

Bがわずかに先に照合部位へ到達
→ 「自分がやった」
→ 能動感+自己所属感


照合部位の時間処理障害

Aが先に到達したと誤判定
→ 「やらされた」
→ 被動体験

ここで重要なのは、

実際の物理的順序ではなく、
照合部位が“どう認識したか”である。

つまり、

自我とは物理現象ではなく、

時間順序の神経的解釈

である。


5. 各症状の再配置

状態照合部位での時間判定
正常B → A
自生思考B ≒ A
強迫B遅延(軽度)
させられ体験A → B
思考吹入A ≫ B
幻聴Aが外部起源と解釈
被影響妄想A先行の慢性化

この連続体は質的断絶ではなく、量的ズレで説明できる。


6. この仮説の理論的意義

多くのモデルは、

  • 予測誤差量
  • ドーパミン信号
  • 内部生成の異常

に焦点を当てる。

しかし本モデルは、

「時間順序」という単一変数で
自我体験を再構成する。

これは非常にシンプルで、かつ広範囲を説明可能である。


7. なぜ頭頂葉なのか

頭頂葉は:

  • 感覚統合
  • 身体図式
  • 自己位置認識
  • 視点統合

を担う。

ここは「空間の統合部位」であると同時に、

時間順序の統合部位でもある可能性がある。

TPJ刺激実験では、

  • 自己離脱体験
  • 自己位置錯覚

が誘発されることが知られている。

つまり、

自己とは、頭頂葉的統合現象である。


8. 進化論的含意

頭頂葉は比較的後期進化部位である。

高度な自己反省は、

この統合回路に依存する。

後発回路は脆弱である。

ゆえに、

自我は壊れやすい。


9. 精神療法との関係

もし照合部位の時間判定が歪むなら、

精神療法は何をしているのか?

可能性:

  • 外界予測の再構築
  • 意味づけによる再同期化
  • 安定した他者との関係による時間構造の補強

療法者は、

安定したB信号の代理発生源

とも言える。


10. 理論の核心を一文で

自我の能動性とは、

頭頂葉的照合部位において、
内部結果信号が外部結果信号よりも先に到達したと解釈される時間構造である。

この順序が逆転すれば、

自我は外部化する。


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