予測符号化(Predictive Coding)理論の具体例を用いた説明で、具体例4として、次のようにある。
具体例4:習慣化(Habituation)
◆ 現象の説明: 繰り返し同じ無害な刺激が与えられると、徐々に反応が小さくなります。例えば、通勤中にいつも聞く電車の音に慣れてしまうことなどが該当します。
◆ 予測符号化による説明: 繰り返し刺激が入力されると、脳は正確な予測モデルを構築する 最初は予測誤差が大きく、驚きや注意が向くが、繰り返すことで「これは危険じゃない」「これは普通のこと」と学習する。 予測モデルが洗練され、予測誤差がどんどん小さくなる 初めは「ドアが開く音=何かあるかも?」だったのが、最終的には「ドアが開くのは当然」となり、反応しなくなる。 結果として、行動や生理的反応が Habituation(習慣化)する 新奇性が減ると共に、脳はその刺激に対する資源配分を減らすようになります。
◆ 結論: 習慣化は、予測モデルが刺激に対して正確になりすぎた結果、予測誤差がほとんど出なくなることによって起こると説明されます。
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なるほど、そうですね。いつもの静かさに慣れている猫がいるとして、大学生の娘が夏休みに帰ってきて、ピアノを弾いたりする。すると、猫は最初は何事かと思い、耳をピクピクさせて反応する。しかししばらくたつと、ピアノの音は無害であると知り、もういちいち反応しないようになる。
これは細胞レベルでも同じで、たとえば一個の脳神経細胞に着目すると、新しい刺激があれば反応するが、しばらく同じ刺激が反復して、しかも自分には害がないようだと知ると、細胞は反応しなくなる。そのほうがエネルギーの節約になるから。いちいち反応してエネルギーを浪費する細胞に比較して、生存確率が上がるだろう。
つまり、誤差がない状態では、MAD理論でいう、D型細胞が適切なありかたということになる。従って、脳神経細胞の多くはD型細胞になる。
環境変化が大きくて、いつも変化が必要なら、M型細胞がいい。環境変化はあるけれども、無視しないで同じ反応を返していればいいという場合にはA型細胞がいい。環境変化があっても無視していればいいというならD型細胞でいい。
D型細胞は、誤差無視型細胞である。反応しすぎても死にそうだし、同じ反応を繰り返していても死にそうだし、無視していても死にそうだし、どれが絶対にいいとも言えないので、適切な程度に混合してあるのだろうと思う。
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治療者というものは過敏に反応しないほうがよいと考えられる。
そもそも患者さんの側は過敏すぎて不適応になっている。その過敏さに合わせて好かれていても治療には有益ではない。
患者さんが、ここで反応するだろうなと思うところで、反応せず、穏やかにしていれば、患者さんの世界内モデルが書き変えられるきっかけになるかもしれないのだ。
