関係フレーム理論(RFT:Relational Frame Theory)

**関係フレーム理論(RFT:Relational Frame Theory)**とは、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)の基盤となっている心理学的な理論です。

この理論は、人間の苦痛の多くは**「言語」が持つ特殊な性質(双方向性や評価的な性質)**に起因していると主張しています。


1. RFTの核心:物理的特性を超えた「関連付け」

人間以外の動物や幼い子供は、物理的な大きさに基づいて「10セント硬貨(ダイム)は5セント硬貨(ニッケル)より小さい」と認識します。しかし、言語を習得した大人は、社会的な慣習や定義を通じてこれらを関連付け、金銭的価値という文脈において**「10セントの方が5セントより『大きい(価値がある)』」**と結論づけます。

  • 物理的特性: 実際に見える大きさや形による判断。
  • 言語的関連付け: 社会的なルールや慣習による、目に見えない価値や関係性の判断。

このように、人間は刺激を物理的な特性だけでなく、主に言語によって生み出される**「派生した関係性(derived relationships)」**に基づいて関連付けることができる唯一の種です。

2. 「諸刃の剣」としての認知能力

RFTは、人間を食物連鎖の頂点に立たせたこの高度な認知能力こそが、同時に人間を感情的な苦痛に閉じ込める原因でもあると指摘しています。

能力メリット(外界の解決)デメリット(内面の苦痛)
計画・予測効率的に目標を達成できる未来の不安を増幅させる
評価・比較より良いものを選べる「自分はダメだ」という自己評価を生む
問題解決髪型や家の色を修正できる思考や感情を強引に消そうとして悪化させる

3. 「コントロールの罠」と心理的非柔軟性

私たちは、髪型や家の壁の色といった「外の世界の対象物」をコントロールするのと同じスキルを、思考や感情といった「内面的な経験」にも適用しようとします。しかし、これには大きな落とし穴があります。

  • 皮肉なリバウンド効果: 研究によれば、思考や感情を抑制しようと試みるほど、それらはかえって強く現れることが実証されています。
  • 経験的回避: 不快な内的経験を避けようとすることで、短期的には楽になっても、長期的には「自由に生きる能力」が大きく制限されてしまいます。
  • 心理的非柔軟性: 文字通りの言語と過度に同一化(フュージョン)してしまうことが、苦痛の核心にある**「心理的非柔軟性」**を生み出します。

4. RFTからACTへ

ACTは、このRFTの知見に基づき、言語的なルールで苦痛を「解決」しようとする格闘をやめることを提案します。 思考や感情を無理に変えようとするのではなく、それらとの**「関係性」を変える(脱フュージョン)ことで、自分の「価値」**に沿った行動を選択できる柔軟性を養うことを目指します。


これまで、日本の近代化における「空気」や「世間」という外在的な規範が、個人の内面を縛る物語(内容としての自己)として機能していることを議論しました。RFTの視点で見れば、これらもまた「派生した関係性」によって強化された言語的なルールと言えます。

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