「価値」と「コミットされた行為」

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)において、**「価値」と「コミットされた行為」**は、心理的柔軟性を高めて「大切なことをする(do what matters)」ための非常に重要なプロセスです。

簡単に言うと、**「価値」は人生で進むべき「方向性(コンパス)」であり、「コミットされた行為」はその方向に沿って「実際に一歩を踏み出すこと」**を指します。


1. 「価値(Values)」:人生の北極星

価値とは、個人によって「重要で意味がある」と定義された道筋や方向性のことです。

  • 何になりたいか: 自分が真にどのような人間になりたいか、何を主張したいかを定義するものです。
  • 終わりのない旅: 価値の最大の特徴は、**「恒久的に達成されることがない」**点にあります。例えば、「学習する」という価値に終わりはありません。
  • 個人的な選択: 価値は他者や文化が決めるものではありません。出典資料では、**「誰も私がこれをしていることを知らなくても、私にとってそれはまだ重要だろうか?」**と自問することで、真の価値を見極めるよう提案しています。

2. 「コミットされた行為(Committed Action)」:有言実行

コミットされた行為とは、特定された価値に沿って、実際に**行動を変化させる(有言実行する)**ことです。

  • 行動の変容: ACTの目的は内面的な思考や感情を変えることではなく、最終的に行動を変えることにあります。
  • 具体的戦略: 価値ある方向に動くために、問題解決戦略、曝露(エクスポージャー)技法、断言的なコミュニケーションスキルなどが用いられることもあります。

3. 「価値」と「目標」の決定的な違い

混同されやすいですが、ACTでは価値と目標を明確に区別します。

項目価値(Values)目標(Goals)
性質終わりのない方向性完了できる終点
チェックTo Doリストには載らない達成時にチェックを付けられる
「愛情深い親であること」「今夜、子供と30分遊ぶ」

4. 障害を乗り越えるための「心理的柔軟性」

価値に沿った行動をとろうとすると、必ず不安や恐怖といった**「内的な障害(思考や感情)」**が生じます。

  • 格闘を避ける: これらの障害を無理に消そうとすると(経験的回避)、かえって行動が制限されてしまいます。
  • 他プロセスの活用: そのため、アクセプタンス(受容)や脱フュージョンといった他のプロセスを使い、不快な感情を抱えたままでも**「代替の、価値に基づいた選択」**(例:不安を感じつつも大切な試合に出席する)ができるようにトレーニングします。

これまでの議論に関連させると、日本の「世間」や「空気」といった外在的な物語(内容としての自己)に縛られるのではなく、自分自身の**「価値」を再定義し、それに基づいた「責任ある行動(コミットされた行為)」**を選択することが、ACTが目指す自律的な生き方であると言えます。

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