結論を先に言えば、現代日本の保守思想が無理をしているのは、「天皇」「宗教」「近代国家」を同時に肯定しようとしている点です。
この三つは、歴史的には同時成立しません。
以下、どこで無理が生じているかを、構造ごとに整理します。
1️⃣ 天皇を「超歴史的存在」にしてしまう無理
何が無理か
現代保守では、
- 天皇は
- いつの時代も同じ意味
- 変わらぬ本質
- 一貫した象徴
として語られがちです。
しかし実際には、
- 仏教的天皇(法皇・治天の君)
- 武家政権の下での象徴的天皇
- 明治の主権者天皇
- 戦後の象徴天皇
は、機能も意味も全く違う存在でした。
無理の正体
歴史的に変化してきた制度を、
変化しなかったかのように語る
これは保守というより、神話化です。
2️⃣ 「宗教ではない神道」という二重言語の無理
何が無理か
現代保守はしばしば、
- 神道は宗教ではない
- 日本人の伝統的生活様式
- 信仰を強制していない
と言います。
しかし同時に、
- 天皇は神話的系譜を持つ
- 皇祖神への祭祀が国家的意味を持つ
- 国民はそれを「尊崇」すべきだ
とも主張する。
無理の正体
宗教でないと言いながら、
宗教的権威として機能させている
これは近代憲法と理論的に両立しません。
3️⃣ 「伝統」を選別している無理
何が無理か
現代保守は「日本の伝統」を強調しますが、
- 神仏習合
- 天皇の仏教帰依
- 出家・法皇
- 死や穢れの仏教的処理
といった都合の悪い伝統には触れません。
無理の正体
伝統を守ると言いながら、
伝統を大幅に削っている
これは保守というより、
近代的な編集主義です。
4️⃣ 「象徴天皇」と「国民統合」の緊張を無視する無理
何が無理か
戦後憲法では、
- 天皇は
- 政治的権限を持たない
- 国民統合の象徴
です。
しかし保守言説では、
- 道徳的中心
- 日本精神の核
- 国民が敬意を持つべき規範
として、半ば実質的権威を背負わせている。
無理の正体
権限は否定し、
影響力だけは最大化する
これは象徴天皇制を不安定化させます。
5️⃣ 「個人の自由」と「国家への忠誠」を同時に最大化しようとする無理
何が無理か
現代保守は、
- 個人の自由
- 家族の価値
- 自発的愛国心
を尊重すると言います。
しかし同時に、
- 国旗・国歌への態度
- 歴史認識
- 皇室への敬意
に、事実上の規範を設けたがる。
無理の正体
自由だと言いながら、
「正しい感情」を求める
これは自由主義とも、
古典的保守ともズレています。
6️⃣ なぜこの無理が続くのか
理由は単純です。
- 明治国家神道の「切断」を
正面から総括していない - 戦後の象徴天皇制を
歴史的に消化しきれていない - それでも
「連続してきた国家」という物語を
手放したくない
だから、
無理だと分かっている継ぎ目を、
言葉で塗り固め続けている
7️⃣ 一文でまとめるなら
現代日本の保守思想が最も無理をしているのは、
「歴史的に断絶したものを、断絶しなかった顔で抱え続けている」点です。
