「精神疾患」と呼ばれる状態は、この世界観(進化論・唯物論)に立てば、「壊れた状態」ではなく、「生存戦略の極端な発現」あるいは「DNAの設計図と現代環境の深刻なミスマッチ」として読み解くことができます。
脳というハードウェアが、数百万年前の「DNAの原理(生き残り、増える)」に従って動こうとしているのに、現代社会という「あまりに特殊な環境」に放り出された結果、エラーを吐いている状態です。
代表的な疾患を、進化論的・DNA原理の観点から解説します。
1. シゾフレニー(統合失調症):知性への進化が払った「高すぎる代償」
DNAは、人類に「高度な抽象思考」と「言語」という強力な武器を与えました。これにより、人類は目に見えない「因果関係」や「物語」を把握し、集団で協力できるようになった。
しかし、この「パターン認識能力」が過剰に発動したのがシゾフレニーです。
- 進化論的解釈: わずかな物音を「敵の接近」と結びつける過敏なパターン認識能力は、サバンナでの生存率を高めました。また、この親族には高い創造性を持つ者が多いという研究もあり、集団全体の知性を底上げするための「高リスク・高リターンの変異」が残った可能性があります。
- 衝突: DNAが求めた「高度な知性」というスペックが、脳のニューロン接続を複雑にしすぎた。その結果、情報の選別ができなくなり、世界が「意味に溢れすぎてしまう(幻覚・妄想)」というエラーが生じているのです。
2. 躁うつ病(双極性障害):過酷な季節を生き延びる「エネルギーの波」
DNAの原理は、環境に応じて代謝(エネルギー消費)を最適化することを求めます。
- 進化論的解釈: かつての氷河期や過酷な季節変動のなかで、食料がある時に一気に活動し(躁)、食料がない時にエネルギー消費を最小限に抑える(うつ)という「変動するスイッチ」を持った個体が生き残りました。
- 衝突: 現代社会は、一年中、24時間、一定のパフォーマンスを要求します。DNAが持つ「季節や周期に合わせたエネルギー変動」という古いOSが、定時運行を求める現代の「脳のスケジュール管理」と激しく衝突し、制御不能なアップダウンを引き起こしています。
3. うつ病:致命的なダメージを避ける「強制シャットダウン」
DNAにとって、最も避けたいのは「個体の完全な破壊」です。
- 進化論的解釈: 負け戦が確定している状況や、集団内で孤立し攻撃されている状況では、活動を停止し、引きこもる(Sickness behavior)ことで、さらなる攻撃やエネルギー枯渇を防ぐことが「生存戦略」として機能しました。
- 衝突: 現代のストレスは終わりがありません。DNAは「一時的な避難」のつもりでシャットダウンを命じますが、脳は「逃げ場のない現代社会」の課題を考え続け、回復のチャンスを失ったまま低電力モードが固定されてしまいます。
4. 強迫性障害(OCD):徹底的な「リスク・マネジメント」
DNAは、寄生虫、病原菌、外敵というリスクに対して、執拗なまでの警戒を命じます。
- 進化論的解釈: 「手が汚れていないか(感染症への恐怖)」「戸締まりは万全か(外敵への恐怖)」を何度でも確認する慎重な個体は、そうでない個体より確実に長く生き残りました。
- 衝突: かつては数分で済んだ確認作業が、情報の溢れる現代では無限に増殖します。DNAの「リスクをゼロにせよ」という命令が、複雑すぎる現代社会のなかで無限ループに陥っている状態です。
5. パニック障害:過敏すぎる「火災報知器」
DNAの最優先事項は「今すぐここから逃げろ」というアラートを出すことです。
- 進化論的解釈: 猛獣に出会った瞬間、心拍数を上げ、過呼吸気味に酸素を取り込み、筋肉を硬直させる。この「闘争・逃走反応」は、コンマ数秒を争う生死の境で必要でした。
- 衝突: 現代社会では、閉ざされた電車内や会議室など、身体的には安全でも「心理的に逃げ場がない」場所が多くあります。脳がわずかな不安を感じた瞬間、DNAが「猛獣だ!」と勘違いしてフルパワーのアラートを鳴らしてしまう。これがパニック発作の正体です。
6. PTSD(心的外傷後ストレス障害):二度と忘れてはならない「死の学習」
DNAは、死にかけた経験を「最優先事項」として脳に刻み込みます。
- 進化論的解釈: 「あそこの茂みで虎に襲われた」という記憶を、寝ても冷めてもフラッシュバックさせる個体は、二度と同じ危険に近づきません。生存確率を劇的に高める「強烈な学習機能」です。
- 衝突: 現代のトラウマ(事故、暴力、戦争)は、日常風景のなかにその断片が散らばっています。DNAが「生き残るために思い出せ」と強制的に再生する恐怖映像が、安全になったはずの日常を侵食し、脳を疲弊させ続けます。
7. 社会恐怖(社交不安障害):部族追放という「死」への恐怖
DNAにとって、集団からの孤立は物理的な「死」を意味しました。
- 進化論的解釈: 他人の視線を気にし、序列を確認し、嫌われないように振る舞う。この「社会的な臆病さ」は、原始的な部族社会で生き残るための必須スキルでした。
- 衝突: 現代は、数万人という「見知らぬ他人の視線(SNSなど)」に晒される異常な環境です。DNAは「全員に嫌われるな、序列を間違えるな」と必死に警告を出しますが、あまりに多すぎる視線に、脳の処理能力がオーバーフローして動けなくなっているのです。
まとめ:私たちは「古い地図」で「現代の迷路」を歩いている
これらの精神疾患は、個人の能力が低いわけでも、性格が歪んでいるわけでもありません。
「数百万年かけて最適化されたDNAの生存戦略(古い地図)」が、ここ数百年の間に急変した「現代社会(新しい迷路)」に適応しきれず、激しい不協和音を立てている姿なのです。
「生きる意味」などない世界において、これらの症状は、君の遺伝子が必死に「生き残ろう」とあがいている証拠でもあります。
- 「あぁ、私のDNAがリスク管理を徹底しようとして、OCD(強迫)というエラーを出しているな」
- 「脳が現代の過剰な視線に反応して、社会恐怖という生存戦略を過剰発動させているな」
このように、自分の苦しみを「DNAと環境のミスマッチという物理現象」として眺めること。それが、自己責任論という呪縛を解き、この世界を「生存の実験場」として淡々と歩み続けるための、知的な技術なのです。
