1. なぜ朝鮮半島・中国大陸には「天皇のような存在」が残らなかったのか
まず比較から。
中国
- **皇帝は徹底して「機能的存在」**でした。
- 天命思想(易姓革命)により、
- 徳を失えば王朝は交代して当然
- 血統は尊重されるが、絶対ではない
- したがって
- 王朝が滅びれば皇帝の家系も消える
- 皇帝は「制度」であり、「人格」ではない
朝鮮半島
- 中国モデルを強く継承
- 王(国王)は
- 官僚制の頂点
- 王朝交代は現実的選択肢
- 高麗 → 李氏朝鮮の交代も比較的スムーズ
👉 大陸では「国家>王家」
👉 王は交換可能な装置
2. それに対して、日本で起きた「異常事態」
日本の特異点はここです
- 天皇が「政治権力」から切り離された
- しかし
- 殺されなかった
- 断絶させられなかった
- 排除されなかった
普通はここで消えます。
本来ありえた歴史
- 鎌倉幕府成立時
- 室町幕府成立時
- 織田・豊臣政権期
- 徳川幕府成立時
どこかで
「もう要らないよね」
となってよかった。
それでも消えなかった。
3. なぜ消されなかったのか:主要な説
①「権威の外在化」説(最も有力)
- 日本では
- 支配=穢れ
- 暴力=不浄
- 天皇は
- 決断しない
- 責任を取らない
- 汚れない
- つまり
- 政治をしないことで神聖性を保つ存在
👉 権力者(武家)にとって
👉 天皇は「便利な外部装置」
消すより、置いておいた方が都合がよかった。
②「正統性の供給源」説
- 武家政権はすべて
- 天皇からの任官
- 朝廷の承認
を必要とした
- 自分が「賊」ではない証明として
- 天皇の存在が必要
👉 天皇は
👉 「正統性を供給する機械」
殺すと、自分の立場も崩れる。
③「宗教と政治の未分化」説
- 日本では
- 王権
- 祭祀
- 祖霊
が強く結びついたまま分離しなかった
- 天皇は
- 国家元首というより
- 祭祀主体
- 武家は
- 軍事・行政
- 現世の管理
- 役割分担が成立した
👉 排除する理由がなかった。
④「空位の中心」説(思想史的)
- 天皇は
- 何もしない
- 決めない
- 説明しない
- しかし
- そこに「中心」がある
- 日本社会は
- 空白を中心に回る構造
を作ってしまった
- 空白を中心に回る構造
👉 天皇は「不在の中心」
👉 消すと、社会全体が不安定になる
⑤「万世一系は後付け」説(史学的常識)
ここはかなり重要です。
- 「万世一系」という言葉自体
- 近代(明治以降)の概念
- 古代・中世では
- そこまで強調されていない
- 実際には
- 系譜が怪しい部分
- 女性天皇
- 養子・傍系
が多い
👉 連続性は「事実」より「物語」
ただし
- 「ずっと続いていると信じられてきた」
こと自体が政治的事実
4. 京都御所に「ずっと住んでいた」のか?
結論から言うと
- 基本的には京都
- ただし
- 一時的に移動
- 仮御所
- 戦乱で荒廃
は頻繁
重要なのは
- 「豪華な宮殿」ではなく
- 象徴的な居場所
として維持された点
👉 天皇は
👉 生活水準すら保証されないこともあった
👉 それでも「消されなかった」
5. 総合すると:日本で何が起きたのか
一言で言えば、
権力を持たないことが、権威を永続させた
- 大陸:権力=正統性 → 滅びる
- 日本:非権力=正統性 → 残る
天皇は
- 勝者にも敗者にもなれない
- だから殺す理由もない
- しかし「意味」だけは残る
6. 最後に:なぜ「不思議」に感じるのか
不思議に感じるのは健全です。
なぜなら
- 天皇は
- 国家元首でもない
- 宗教指導者でもない
- 政治権力者でもない
- それなのに
- 消えない
これは
- 制度ではなく
- 日本社会の深層構造
の話だからです。
