「12月の開花:高齢者との精神力動的心理療法」要約
この本は高齢者との精神力動的心理療法の価値と課題について論じている。著者は、高齢者心理療法が関心を集めていない問題を指摘し、この人口層への治療的アプローチの理論的発展を促している。
高齢者心理療法は独自の課題を抱えている。治療者は患者の身体的苦痛や配偶者の喪失を取り除くことはできないが、それでも意義のある成長を促進できる。高齢者は死の近さを意識しており、それが治療における深い取り組みを促進することがある。しかし、精神分析の世界では高齢者への治療に関する文献や理論が不足している。
著者は個人の臨床家が高齢者治療を避ける理由として、辛い逆転移、死や老化と向き合う必要性、治療結果からの満足感の変化、エイジズム(年齢差別)などを挙げている。さらに精神分析の歴史的要因も指摘している:ホロコーストによる精神分析先駆者たちのトラウマ、精神分析と心理療法の区別による硬直性、トラウマ・喪失・死の不安についての理論的弱点である。
伝統的な精神分析は硬直した枠組みを持ち、高齢者治療に必要な柔軟性を欠いていた。フロイトが50歳以上の人は変化しにくいという見解を示したことで、高齢者は精神分析的治療から利益を得られないという偏見が強化された。しかし著者はこの見解に異議を唱え、高齢者はしばしば変化への強い動機を持ち、死の意識が治療過程を促進すると主張している。
精神分析は長らくトラウマ、愛着と喪失、死の不安といった領域を適切に理論化できずにいた。これらは高齢者の心理療法において特に重要な要素である。晩年に発生するトラウマの理解、喪失への対処、死と向き合うことは高齢者治療の中心的課題だが、初期の精神分析理論ではこれらが軽視または誤解されていた。
著者は本書を通じて、高齢期の発達課題、高齢者特有のトラウマ、転移・逆転移の構図、生活の物語の再構築、実存的問題(死・意味・全能性の限界)、終わりと悲嘆について検討していく意図を述べている。増加する高齢者人口のニーズに応えるため、精神力動的心理療法の実践者たちが高齢者治療への理解を深め、理論を発展させることの重要性を訴えている。
著者自身の臨床経験は主にニューヨーク市大都市圏に住む様々な背景を持つ高齢者に基づいており、患者のプライバシー保護のために詳細を変更したり複数の事例を合成したりしていることも明記している。結論として、精神力動的アプローチの柔軟な適用により、高齢者の心理的苦痛の緩和と有意義な成長の促進が可能であると主張している。