てんかん 発作による分類 躁状態の理解 MAD理論

発作による分類
1.焦点起始発作
  ・焦点意識保持発作
  ・焦点意識減損発作
  ・焦点起始両側強直間代発作
2.全般起始発作
3.起始不明発作

大脳の片側の一部から発作が始まるものを「焦点起始発作」、大脳の両側が同時に一気に興奮して発作が始まるものを「全般起始発作」、発作を見ただけではどちらか判断できない場合は「起始不明発作」と分類します。

焦点起始発作は大脳の片側の一部から電気的な興奮が始まるため、興奮の範囲が狭いと意識が保たれた状態で発作を起こすことがあります。

意識の保たれた焦点起始発作を焦点意識保持発作(旧 単純部分発作)、意識の保たれていない焦点起始発作を焦点意識減損発作(旧 複雑部分発作)と呼びます。

さらに、大脳の片側の一部から始まった電気的な興奮が大脳の両側に広がって全身のけいれん(強直間代発作)となった場合は焦点起始両側強直間代発作と呼ぶこととなっています(旧 二次性全般化)。

これをもとに次の「てんかん病型」を分類していきます。


躁状態と全般起始発作のてんかん:脳の過剰興奮という共通の病態

躁状態とてんかんの全般起始発作は、一見すると全く異なる症状に見えますが、その根底にある病態、特に脳の神経細胞レベルでの働きには類似点が存在します。その核心は、どちらも「神経細胞の過剰な興奮」によって引き起こされるという点にあります。

てんかん発作が「脳の電気的嵐」と表現されるように、脳内の多数の神経細胞が一斉に、そして過剰に電気的興奮を起こすことで生じます。特に全般起始発作では、その電気的な興奮が脳の広範囲で同時に起こることが特徴です。

一方、双極性障害の躁状態もまた、脳の特定領域における神経細胞の活動が過剰に高まった状態と考えられています。この神経の「過興奮」という共通の土台が、両者の病態を結びつけています。

以下に、その類似性を支える具体的なメカニズムを解説します。

1. イオンチャネルの機能異常(チャネル病)

神経細胞の興奮は、細胞膜にあるイオンチャネルというタンパク質を通して、ナトリウムイオンやカルシウムイオンなどが細胞内外を行き来することで制御されています。このイオンチャネルの機能に異常が生じると、神経細胞が興奮しやすくなります。

  • てんかん: 多くの種類のてんかん、特に遺伝性のてんかんでは、イオンチャネルを構成する遺伝子の変異が原因であることが判明しており、「チャネル病」とも呼ばれています。これによりイオンの流れが異常になり、神経細胞の過剰な電気的興奮が引き起こされます。
  • 躁状態: 双極性障害のゲノム研究においても、カルシウムチャネルやナトリウムチャネルに関連する遺伝子(例:CACNA1C, ANK3)の異常が、発症リスクと強く関連していることが示されています。これらの遺伝子の異常は、神経細胞を過剰に興奮しやすい状態にさせ、躁状態の背景にある電気的な活動の亢進の一因と考えられています。

このように、両方の疾患において、イオンチャネルの機能不全が神経細胞の過剰な興奮を引き起こすという共通の基盤が存在する可能性があります。

2. 興奮性・抑制性神経伝達の不均衡

脳内の神経活動は、アクセルの役割を果たす「興奮性」の神経伝達物質(主にグルタミン酸)と、ブレーキの役割を果たす「抑制性」の神経伝達物質(主にGABA)の絶妙なバランスによって保たれています。

  • てんかん: てんかんでは、このバランスが崩れ、興奮性が抑制性を上回ることが発作の引き金になると考えられています。抑制性のGABAの機能不全が、神経ネットワークの過剰興奮を招き、てんかん発作に関係することが示唆されています。
  • 躁状態: 双極性障害においても、興奮性と抑制性の神経伝達の不均衡が病態に関与している可能性が指摘されています。患者由来のiPS細胞から作製した神経細胞の研究では、抑制性神経細胞への分化が亢進しているという報告もあり、これは脳の発達段階における神経細胞の不均衡が疾患の発症に関連することを示唆しています。

両疾患ともに、脳内の興奮と抑制のバランスが崩れることで、神経活動が適切に制御できなくなるという共通点が見られます。

3. 治療薬の共通性

躁状態とてんかんの病態に類似性があることを示唆するもう一つの根拠は、治療薬の一部が共通している点です。バルプロ酸やカルバマゼピンといった一部の抗てんかん薬は、双極性障害の気分安定薬としても広く用いられています。これらの薬剤は、脳内の神経細胞の過剰な興奮を抑える作用を持つことから、両方の疾患の根底にある共通の病態に作用している可能性が考えられます。

まとめ

躁状態と全般起始発作のてんかんは、症状の現れ方は異なりますが、その病態には「神経細胞の過剰な興奮」という共通の基盤が存在します。この過剰興奮は、イオンチャネルの機能異常や、興奮性と抑制性の神経伝達の不均衡といった、細胞・分子レベルでの類似したメカニズムによって引き起こされると考えられています。このような視点は、両疾患のさらなる病態解明や、新たな治療法の開発につながる可能性があります。

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