「最高の自分(Best Possible Self)」とは?
これは、ポジティブ心理学の研究者ローラ・キング博士によって開発された、楽観性(オプティミズム)を高めるための強力なエクササイズです。
一言で言うと、「将来、自分の努力がすべて実を結び、最高の状態になった自分を具体的に想像し、それを文章に書き出す」というワークです。
単に夢を思い描くだけでなく、「現実的な努力がすべて報われた未来」を想像することで、脳は目標達成への道筋をよりリアルに認識し、そこに向かうモチベーションや希望が湧きやすくなります。
このエクササイズの目的と効果
- 楽観性の向上: 未来に対してポジティブな期待を持つ習慣が身につきます。
- 幸福感の増大: 自分の理想の未来を具体的に描くことで、ポジティブな感情が喚起されます。
- 目標の明確化: 自分が本当に望んでいること、大切にしたい価値観が明確になります。
- モチベーションの向上: 理想の未来が具体化されることで、そこに向かうための行動意欲が高まります。
- ストレスの軽減: 日々の小さな悩みから解放され、より大きな視点で人生を捉えられるようになります。
具体的なやり方(ステップ・バイ・ステップ)
このエクササイズは非常にシンプルです。静かで集中できる環境で、15〜20分ほどの時間を確保して行いましょう。
【準備するもの】
- 紙とペン、またはパソコンのテキストエディタ
ステップ1:テーマを設定する
まず、どのような未来について考えるか、テーマを決めます。漠然と「未来」としても良いですが、最初は特定の領域に絞ると書きやすいでしょう。
<テーマの例>
- 1年後の未来
- 5年後のキャリア
- 理想の人間関係
- 健康的な生活
- 総合的な人生全体
ステップ2:最高の未来を想像する
選んだテーマについて、以下のような問いを自分に投げかけながら、自由に想像を膨らませます。
「もし、将来の夢がすべて叶い、あなたの努力がすべて実を結んだとしたら、そこにはどんな自分がいるだろうか?」
- ポイント:
- 魔法や奇跡ではなく、あくまで「自分の努力が報われた結果」として考えます。 これが、単なる空想との違いです。
- 制約や障害は一旦すべて脇に置いて、「すべてがうまくいったとしたら」という前提で考えます。
ステップ3:文章に書き出す
想像した「最高の自分」の姿を、あたかもそれがすでに現実になったかのように、詳しく、具体的に書き出します。
- 書き方のポイント:
- 五感を使って描写する: どこにいて、何が見え、何が聞こえ、どんな気持ちですか?
- 具体的なディテールを含める:
- 仕事: どんな役割で、どんなプロジェクトに関わり、誰と働いていますか?どんな達成感を味わっていますか?
- 私生活: 誰と、どんな家で、どんな週末を過ごしていますか?
- 人間関係: 家族や友人との関係はどうなっていますか?
- 健康: どんな体型で、どんな食生活や運動習慣を送っていますか?
- 内面: どんな感情(自信、平穏、喜びなど)を感じていますか?
- 現在形または完了形で書く: 「〜になりたい」ではなく、「私は〜になっている」「〜を達成した」という形で書くと、より臨場感が増します。
ステップ4:書いた文章を読み返す
書き終えたら、その文章をゆっくりと読み返します。その未来の自分を味わい、その時のポジティブな感情を感じてみましょう。
書き方の具体例
テーマ:1年後の最高の自分
(悪い例:「仕事で成功して、幸せになりたい。」)
(良い例)
「今、私は1年前に目標としていたプロジェクトを成功させ、チームリーダーとして皆から信頼されている。オフィスでは、窓から差し込む朝日を浴びながら、自信に満ちた表情でキーボードを打っている。先日のプレゼンでは、私の提案が役員に認められ、大きな拍手をもらった。その時の高揚感が今も胸に残っている。仕事終わりには週3回ジムに通う習慣がつき、体も引き締まった。週末は、パートナーと一緒に新しいレシピに挑戦したり、近所の公園を散歩したりして、穏やかで笑いの絶えない時間を過ごしている。友人たちとも定期的に会い、お互いの成長を喜び合える関係を築けている。
毎朝、鏡に映る自分を見て、『よくやっているな』と自然に思える。将来への不安よりも、次は何に挑戦しようかというワクワクした気持ちで満たされている。」
実践のコツと頻度
- 定期的に行う: 研究では、週に1回、15分程度、これを数週間にわたって続けることで持続的な効果が見られるとされています。
- 完璧を目指さない: 最初はうまく書けなくても構いません。思いつくままに書き出すことが大切です。
- 書いたものを保管する: 後で読み返すと、自分の価値観の変化に気づいたり、新たなモチベーションが湧いたりします。
このエクササイズは、自分自身への最高の「応援メッセージ」を作る作業です。ぜひ一度、あなたの「最高の自分」を描いてみてください。きっと、未来への扉を開く鍵が見つかるはずです。