境界性パーソナリティ障害(BPD)のDSMにおける変遷は、診断基準の改訂と、その概念の理解の深化に伴って変化してきました。DSM-IIIでは、BPDは「逸脱的パーソナリティ障害」というカテゴリーに分類され、その後DSM-IVで「境界性パーソナリティ障害」として独立した診断名が与えられました。DSM-5では、診断基準がより明確化され、BPDの核心的な特徴である「自己、対人関係、感情の不安定性」が強調されています。
DSMの変遷におけるBPDの記述:
DSM-III:
「逸脱的パーソナリティ障害」というカテゴリーに、BPDを含むいくつかのパーソナリティ障害が分類されました。この時点では、BPDの診断基準はまだ明確ではありませんでした.
DSM-IV:
BPDは独立した診断名として確立され、診断基準が明確化されました。具体的な症状として、「見捨てられ不安」「不安定な対人関係」「自己概念の不安定さ」「衝動性」「自傷行為」「感情不安定性」「空虚感」「易怒性」「解離症状」などが挙げられました.
DSM-5:
診断基準はさらに明確化され、BPDの核心的な特徴である「自己、対人関係、感情の不安定性」が強調されました。また、DSM-5では、パーソナリティ障害の診断に、機能レベルの評価を取り入れることが提案され、BPDの重症度を評価する上で、より包括的な視点が導入されました.
DSM-5におけるBPDの診断基準のポイント:
自己の不安定性:
自己のアイデンティティ、目標、価値観などが不安定で、一貫性がない状態。
対人関係の不安定性:
対人関係が激しく、不安定で、理想化と価値の剥奪を繰り返す状態。
感情の不安定性:
感情の起伏が激しく、怒りや不安などの感情をコントロールすることが難しい状態。
衝動性:
衝動的な行動(例:薬物乱用、浪費、過食、危険な運転)が見られる状態。
自傷行為:
自傷行為や自殺企図が見られる状態。
解離症状:
現実感の喪失、記憶の欠落などの解離症状が見られる状態。
DSMにおけるBPDの診断基準は、BPDの理解と診断を深める上で重要な役割を果たしてきました。DSM-5では、BPDの診断基準がより明確化され、BPDの核心的な特徴である「自己、対人関係、感情の不安定性」が強調されています。また、BPDの重症度を評価する上で、機能レベルの評価を取り入れることが提案されています。
DSM-IV-TRの診断基準では、以下9項目のうち5つ以上を満たすこと
対人関係、自己像、感情の不安定および著しい衝動性の広範な様式で成人期早期に始まり、さまざまな状況で明らかになる。
1.現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとする気も狂わんばかりの努力(注:5.の自殺行為または自傷行為は含めないこと)
2.理想化と脱価値化との両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる不安定で激しい対人関係様式
3.同一性障害:著明で持続的な不安定な自己像や自己観
4.自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域にわたるもの(例:浪費、性行為、物質濫用、無謀な運転、むちゃ食い)
5.自殺の行為、そぶり、脅し、または自傷行為のくり返し
6.顕著な気分反応性による感情不安定性(例:通常は2 – 3時間持続し、2 – 3日以上持続することはまれな強い気分変調、いらいら、または不安)
7.慢性的な空虚感
8.不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難(例:しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いのけんかをくり返す)
9.一過性のストレス関連性の妄想様観念、または重篤な解離性症状
DSM-5
ボーダーラインパーソナリティ症の診断を下すには,患者に以下が認められる必要がある:
・不安定な対人関係,自己像,感情(すなわち,感情の調節不全),および顕著な衝動性を示す持続的なパターン
この持続的パターンは以下のうちの5つ以上により示される:
・見捨てられること(実際のものまたは想像上のもの)を避けるために,なりふり構わない努力をする
・相手の理想化とこき下ろしの間を揺れ動く,不安定で激しい人間関係をもつ
・自己像または自己感覚が不安定である
・少なくとも2つの領域で自らに害を及ぼしうる衝動性がみられる(例,安全ではない性行為,むちゃ食い,無謀な運転)
・自殺行動/自殺演技や自殺の脅しまたは自傷行為を繰り返す
・気分が急激に変化する(通常は数時間しか続かず,数日以上続くことはまれ)
・空虚感を絶えず覚えている
・不適切に強い怒りを覚えるか,怒りのコントロールに問題がある
・ストレスによって一時的な猜疑性思考または重度の解離症状が誘発される
また,症状は成人期早期までに始まっている必要があるが,青年期に生じることもある。
DSM-III-Rの診断基準(要約):
DSM-III-R(精神疾患の診断・統計マニュアル第3版改訂版)では、境界性パーソナリティ障害は以下の9つの診断基準のうち5つ以上を満たす場合に診断されます。
1.見捨てられへの恐怖:現実的な見捨てられを避けようと必死の努力をする。
2.不安定で激しい対人関係:相手を理想化したり、価値を下げたりする関係を繰り返す。
3.同一性(自己概念)の障害:自己像や自己認識が不安定で、一貫性がない。
4.衝動性:浪費、性行為、物質乱用、無謀運転、過食など、自己を傷つける可能性のある衝動的な行動を2つ以上示す。
5.自傷行為、自殺企図、または脅迫:自傷行為、自殺企図、または自殺の脅迫を繰り返す。
6.感情の不安定性:気分の変動が激しく、数時間から数日で変化する。
7.慢性的な空虚感:常に空虚感を感じている。
8.不適切な激しい怒り:怒りの感情をコントロールするのが難しく、激しい怒りを示す。
9.ストレス関連の一時的な妄想様思考、または重度の解離症状:ストレスがかかると、一時的に現実から離れたり、解離症状を経験したりする。