脳とDNA

遺伝子には、価値の上下があるわけではない。
ただ、その時々の環境において、
適合するか否かがあるだけである。それだけが淘汰を決める。

生き残った遺伝子を、私たちは「優れている」と呼びがちだが、
それは、結果からの遡及的な判断にすぎない。

この事実を前に、私たちが「どう生きるべきか」などと問うのは、
脳という器官がつくり出した問いにすぎない。

生きる意味を問う行為そのものが、すでに脳主義の所産だ。
意味を求めたがる脳と、意味もなく淘汰されるDNAとの間には、
深い断層がある。

本来、脳はDNAに仕える存在であるべきだった。
だが時に、脳はその本来の役割を超えて暴走する。
それでも長い時間をかけてみれば、
DNAの原則は静かに貫かれてゆく。

タイトルとURLをコピーしました