BPDでの“自傷”への具体的逐語

ここは臨床で一番「言葉の選び方」が効く場面です。
結論から言うと:

👉 自傷そのものを止めようとするよりも、「自傷に至る流れ」を分解して介入する
👉 ACT的には“衝動と距離を取り、価値に戻す”/TFP的には“関係の中で起きていることを言語化する”

その上で、実際に使える逐語を流れで出します。


■ ケース

患者:
「昨日リストカットしました。もうどうでもよくなって」


■ ① まずは評価ではなく受容

医師:
「そうだったんですね。
かなりしんどい状態だったんだと思います」

👉 ポイント

  • 良し悪しを言わない
  • 行為の背景に入る

■ ② 行為の“機能”を探る(超重要)

医師:
「その直前って、
どんな感じでしたか?」

さらに:

医師:
「切ることで、
何が少し変わりましたか?」

👉 ここでよく出るもの:

  • 感情の鎮静
  • 現実感の回復
  • 自己罰
  • 空虚の埋め

👉 自傷=調整行動として理解する


■ ③ 衝動の分離(ACT)

医師:
「そのとき、
“切りたい”っていう衝動が強く来た感じですか?」

医師:
「“切りたい衝動が来ている”って言い方だと、
少し違って感じますか?」

👉 行為=自分 → 衝動が来ている に変換


■ ④ 時間軸を入れる(重要)

医師:
「その衝動って、
ピークはどれくらい続きましたか?」

👉 ポイント

  • 衝動は波であると体験させる
  • 永続感を崩す

■ ⑤ “間”を作る提案

医師:
「もし次に同じくらい強い衝動が来たときに、

“5分だけ何もしないで様子を見る”っていうのは、
できそうですか?」

👉 ポイント

  • 禁止ではない
  • 遅延(delay)

■ ⑥ 代替行動(ただし押しつけない)

医師:
「その間に、
少しだけ衝動をやり過ごせる方法って、
何かありそうですか?」

例(患者から出させる):

  • 冷たい水
  • 手を握る
  • 音楽

👉 患者主体


■ ⑦ 価値への接続(ここがACT)

医師:
「その衝動がある中でも、

本当はどういうふうに過ごしたいとか、
どんな関係を大事にしたいってありますか?」

👉 例

「壊したくない」


医師:
「“壊したくない”って大事なんですね。

その方向に、
ほんの少しでも近づく行動って何がありそうですか?」

■ ⑧ TFP的介入(関係が絡む場合)

患者:
「どうせ先生もどうでもいいんでしょ」


医師:
「いまこの場で、
私が“どうでもいい存在”に感じられているんですね」

👉 さらに:

医師:
「そう感じると、
自分を傷つけたくなる流れもつながっていそうですね」

👉 関係 → 自傷の連鎖を言語化


■ ■ 臨床での最重要ポイント

■ ① 自傷を否定しない

👉 機能があるから起きている


■ ② いきなりやめさせない

👉 代替がないと悪化


■ ③ 衝動と自己を分ける

👉 ACTの核心


■ ④ 行動を小さくする

👉 0 or 100を崩す


■ よくあるNG逐語

❌「もうやめましょう」
❌「危ないからダメです」
❌「なぜそんなことをしたの?」

👉 羞恥・防衛・断絶


■ 一番効く一言

「やりたくなる理由がちゃんとあると思うんです」

■ あなた向けに一段深く

自傷は:

  • affect regulation
  • self-object調整
  • 関係の表現

👉 ACTは「距離」
👉 TFPは「意味」


■ まとめ

  • 自傷=問題行動ではなく調整行動
  • 衝動を分離する(ACT)
  • 関係を言語化する(TFP)
  • 行動を微小化する

■ 最後の一行

👉 「やめさせる」のではなく、「別の選択肢を増やす」


必要なら:

👉 自傷が止まらない重症例(入院レベル)の対応
👉 解離が強いケースでの違い

さらに臨床的に深いところまでいけます

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