たとえば、あなたは、あの大きな川を渡るとき、筏(いかだ)を使った。
流れは速く、深い。歩いても泳いでも渡れない。
だから、筏を作った。工夫して、材料を集めて、苦労して、ようやく岸にたどり着いた。
筏がなければ、渡れなかった。
渡り終えたとき、あなたは思った。
「この筏があったから、助かった。きっとまた、川を渡ることもあるだろう。だから、これは持ち歩こう。」
けれども、その筏は大きく、重い。
背中に担いで歩けば、あなたの歩みを妨げる。
次に川に出会うかどうかもわからない道を、その筏を抱えて歩くのか?
それは、遠くへ行くための方法ではない。
筏は、川を渡るとき、役に立った。
それで、もう十分だ。
もしまた川があれば、そのときの工夫で越えてゆけばよい。
振り返って、あなたが今、背負っているものは、本当に必要か?
それがあなたの歩みに、力を与えているか?
心の自由を奪っていないか?
かつての業績も、学歴も、肩書きも、あなたが築いてきたものだ。
それは、確かに役に立った時期があった。
心の支えになった。
でも今、それを背負い続けることで、見失っているものはないか?
いまの風景や音を、遠ざけてはいないか?
私があなたに話している言葉や教えも、同じだ。
いまのあなたに、必要だったから、私は語っている。
しかしそれもまた、筏のようなものだ。
必要なときに、使えばいい。
もう必要がなければ、捨ててゆけばよい。
言葉を手放すことは、教えを忘れることではない。
それは、自分で歩き出すことだ。
誰かの言葉で歩くのではなく。
あなたの歩く道は、これから先、変わってゆく。
持ちすぎてはいけない。
手放すことが、はじまりだ。
過去に成功した古いテンプレート、思考や感情のテンプレート、
そうしたものにしがみついている人は多い。
いったん忘れてみるのもよい。
生まれ変わった気分になる。
現実を正確に見て、新しい対処方法を工夫しよう。
それぞれの人にはそのひとなりの工夫がある。