「神経症性障害(neurotic disorders)」と「精神病性障害(psychotic disorders)」の違いは、精神科診断の基本的な区別の一つです。この2つのカテゴリは、現実検討能力の有無と症状の重篤度という観点で明確に区別されます。
🧠 神経症性障害(Neurotic Disorders)
🔹 特徴
特徴 | 内容 |
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現実検討力(reality testing) | 保たれている(現実と妄想の区別がつく) |
自我との関係 | 自我異和的(本人が自分の症状を苦痛だと自覚している) |
社会適応 | 比較的保たれている |
代表的な症状 | 不安、恐怖、抑うつ、強迫、身体症状など |
例 | 不安障害、強迫性障害、身体表現性障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など |
🔹 解説
- 本人は「つらい」「変だ」と自分で認識できる。
- 幻覚や妄想は基本的にない。
- 性格傾向やストレスに大きく関連し、内因性ではなく反応性であることが多い。
🧠 精神病性障害(Psychotic Disorders)
🔹 特徴
特徴 | 内容 |
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現実検討力 | 失われている(幻覚や妄想を現実と信じてしまう) |
自我との関係 | 自我親和的(本人が症状を自分のものとして疑わない) |
社会適応 | 著しく障害されることが多い |
代表的な症状 | 幻覚、妄想、思考障害、失見当など |
例 | 統合失調症、妄想性障害、躁うつ病(の躁病エピソード)、急性一過性精神病など |
🔹 解説
- 本人は「自分は正しい」と確信しており、他人の説明を受け入れない。
- 「被害妄想」「幻聴」「自我障害」などが典型的。
- 入院や隔離が必要となる場合が多い。
🧾 比較表
項目 | 神経症性障害 | 精神病性障害 |
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現実検討力 | 保たれている | 失われている |
自我との関係 | 自我異和的(苦しい) | 自我親和的(当然) |
幻覚・妄想 | 基本的にない | しばしば見られる |
社会生活 | 維持可能な場合が多い | 著しく障害される |
治療反応性 | 精神療法や薬物療法に反応しやすい | 薬物療法が中心、入院も |
代表疾患 | 不安障害、PTSD、強迫性障害など | 統合失調症、妄想性障害、躁病エピソードなど |
🧩 最近の傾向(DSM-5など)
- DSM-5では「神経症性障害」という分類は使われず、「不安障害群」「強迫および関連症群」「解離性障害」などに細分化。
- 精神病性障害は「統合失調症スペクトラムおよび他の精神病性障害群」として記載されている。
- しかし臨床現場では、神経症型 vs 精神病型という分類は依然として有効であり、診断・治療方針を考えるうえで基本的な視点。