お説教はやめ 神経と筋肉と体の話 うつとMAD理論

1.
うつ病について、いまでも本質がよく分からない。仕方がないので、昔の人は哲学や宗教や心理学などを応用して考えてきた。それも間違ってはいない。それもひとつの説明の仕方である。
しかし、実際の患者さんにとっては、性格の問題とか考え方の傾向とか、認知の修正とか、結構気が重い話だ。人格の話みたいでいやなものでしょう。

2.
でも、別の考え方もある。
例えば、筋肉には二種類があって、速筋と遅筋というもので、短距離走の筋肉とマラソンの筋肉である。あるいは、渡り鳥がずっと飛び続ける筋肉、回遊する魚がずっと泳ぎ続ける筋肉など。種類がある。
神経細胞にも3種類くらいあると考える。
(1)刺激に対して敏感に反応して、すぐに盛り上がって、速くダウンする細胞。
(2)刺激に対して冷静で、だいたい同じ対応を取り続ける、なかなかダウンしない細胞。
(3)刺激に対して無関心な細胞。よほど危険でない限りは無視して、刺激が通り過ぎるのを待つ細胞。
この細胞群が、どのようにふるまい、どのように関係するかを考えれば、性格とか、双極性障害と単極性うつ病、強迫性障害、そしてその治療まで理解できる。

3.
この考え方には、これまでのようなお説教がない。
マラソンを走り切ったら、それは疲れるし、筋肉痛も一週間くらいあるでしょう。野球でピッチャーが9回も投げたら、それは大変だし、筋肉もダウンするし、回復まで4日くらいはかかるでしょう。
それと同じ。頑張った後で神経細胞がダウンして、うつ病になって、回復するまでに少し時間がかかる。
頑張ったのは「火事」に相当する。そのあとうつ状態として症状を感じるのは、ダウンした細胞を回復させるための体の反応である。
昇進して忙しかったりするとうつになる。念願のマイホームを手に入れたらうつになった。そんなこともある。頑張りすぎたからですね。
この全体には、精神的な教えも、宗教的な教えもない。単に神経細胞がそのようにできているというだけだ。
それを私は自分でMAD理論と呼んでいる。

4.
混迷は今も続いていて、例えば、うつ病を国際的ないくつかの診断基準で診断すると、過剰診断になっていると私は思う。双極性障害と単極性うつ病、シゾフレニーに伴ううつ状態、性格障害と関係するうつ状態、PTSDなどの強度の不安と関係するうつ状態、精神的なショックを受けた時の一時的な抑うつ、そのほかいろいろなものが含まれてしまうので、治療効果の検定をしても、はっきりした結果が出ないことが多い。それぞれを違うものとして診断して、それぞれに応じて治療するのが本来の在り方である。それはみんな承知しているが、そこまで科学が発達していないので、現時点で最善の選択ということで、診断も治療も組み立てられている。

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