「土着世界観」は加藤の若い頃に発表した「雑種文化」と一貫した思想の連続性がある。こ
こで加藤周一の日本文化の仕組みに対する理解を確認しておく必要がある。加藤周一が『日本
文学史序説補講』 80にまとめた講義では雑種文化の生成の仕組みについて図式化した。それは
下図のように a が土着世界観、b が外来のイデオロギー、c が外来のイデオロギーに影響され
て土着的なものが変化したものであるという見方である。

加藤周一によると、a の土着世界観は、外来思想と外来思想に影響されて成し得た日本の思
想の両方を引き算すれば推測可能だが、そのままで可視化できるものではないという。このよ
うに加藤周一の中にある独自の「土着世界観」が軸となり、彼の「雑種文化」の視座を支え、
日本文学の歴史の絵巻を構成させたのである。大作『日本文学史序説』は日本の「土着世界観」
が外来思想に遭遇した時の様々な反応を当時の社会背景、人物背景に即してスケッチを試みた
壮大な絵巻である。
