内的王国の物語-5

この国では特に戦争も起きていなかったし食料もあったので
さしあたって困りごとはなかったのですが、
国民はとても疲れ切ってしました。

国民のまとめ役である「セルフ」は、おかしいな、どうしたんだろうと思って、人々の話を聞いてみました。

そもそもの始まりは、AC(傷ついた子供)の出会った苦難でした。とても苦しい思いをして、一人で悩んだ。ちょっと恥ずかしいことだったので、他人に相談する気になれなかった。結果として引きこもりになった。

それを心配したのはCP(厳格な親)とA(論理的な大人)だった。まずAは、「これを繰り返してはならない。二度と間違いが起こらないように、私が全部、隅々までチェックする。誤差をゼロにする。少しでも間違いがあったら、ラッパを吹いて知らせる。」CPは「それがいい。ラッパが聞こえたら、私は全員に命令して、最初から全部やり直させよう。間違いが見つからなくなるまで、徹底的に最初から、やり直す。」こうして、AとCPは協力して、二度と絶対にACが苦しい思いをしないように見張りをして、やり直しをさせた。

最初は有効だった。間違いは起こらなくなった。起こりそうになったらラッパが吹かれて、最初からやり直しになった。
だからACはもう心配しなくていいはずだった。しかしやはりACは心配で引きこもりを続けていた。なぜなら、もう大丈夫かなと思ったくらいの時に突然ラッパが鳴って、全部やり直しになったからだ。いつまでたっても、ラッパは鳴って、やり直しになった。
ACはますます申し訳なくなった。ますます引きこもりになった。誰とも話さなくなった。
実は、Aがますます厳格に、間違い(誤差)を見つけていたからだった。

そんな時に、セルフはみんなと話をしに来たのだった。
セルフはAに聞いた。今でも間違いが起こるのか。Aは答えた。いいえ、ほとんど間違いは起こりません、しかし、堤防も小さなアリの穴から崩れるものです。普通ならほとんど問題にならない程度の小さな間違いも、私は見逃しません。二度と間違いが起こらないようにするには、完璧でないといけません。
セルフは言った。なるほど。そのおかげで、大事に至らないで済んでいる。あなたの功績は大きい。ありがとう。

セルフは次にCPに聞いた。ラッパが鳴ると最初からやり直しだと聞いた。そうなのか。CPは答えた。そうです。小さな間違いだからと言って、その部分だけを治していたのでは、完全とは言えません。最初から全部やり直して、完全に正しい状態を作り出す。これが唯一の解決です。そのおかけで、今日まで、大きな間違いは一度も起こっていません。完璧であるためには、何度でも最初から繰り返すことが必要なのです。
セルフは言った。よく分かった。確かにCPのおかげで、この国はこれまで間違いなくやってこられた。この功績は大きい。感謝する。

そしてそのままセルフはその場所でAとCPの仕事を見守っていました。
Aは、実質何の問題もない、些細な変化を「間違いとして検出してラッパを鳴らして」いました。見逃していたほうが人々は安心して暮らせるはずでした。
CPは、ラッパが鳴ると、最初からやり直しをさせました。それは国民にとっては大きな負担になっていました。国民は困っていたし憑かれていましたが、何も言えませんでした。慎重な方がいいわけですし、完璧な方がいいのですから。

セルフは考えました。「Aは誤差があると一大事だと思っている。だから、無視したほうがいい誤差まで見つけてラッパを吹いている。実際には誤差はない。Aは親切心のゆえに誤差を作り出している」
また、セルフは考えました。「CPはラッパが鳴るたびに最初から全部をやり直している。そのせいで国民は疲れ切っている。慎重なのも大事だが、疲れ切っていては幸福ではない。これはもうやり直しの儀式のようなものだ。実質的な効果は何もない。しかし、CPは忠誠心のゆえに、何度でもやり直しをしている。」

そこでセルフは言いました。「Aよ、あなたの親切心は素晴らしい。人々を守ってくれた。そしてACを守ってくれた。ありがとう。また、CPよ、あなたの忠誠心は素晴らしい。この国の守りを任せるのにふさわしい人物だ。そしてACのこともよく守ってくれた。ありがとう。」「そこでだ、次に私はACにあいたいと思う。あってもよいだろうか。」AもCPも「もちろんです。私たちの大切なACです。よく話を聞いてやってください。」

セルフは場所を移して、ACと対面していました。「さて、AC、大変でしたね。AとCPはよく守ってくれた。しかしこの2、3日、様子を見ていたところでは、Aは少し厳格過ぎて、小さなな誤差も報告しているようだ。それくらいの誤差なら、もう怖くはないのではないか、どうだAC。また、CPは大変几帳面に、一からやり直しをしている。誤差はもうないのだから、やり直しをしなくても大丈夫かもしれない。少しずつでいいから、練習してみるのもいいかもしれない。どうだろう。すぐにでなくていい。頃合いを見て、考えてみてもよいのではないか。お前も、外に出て、FCと一緒に遊んだり、NPと一緒に昼寝をしたらよいだろう。つらかったことはあったが、もうすべては過去のことではないか。つらい時があったら、わたしセルフがいつでもそばにいる。頼ってほしい。時間が経った。もう世界は変わった。昔の誤差はもうない。新しい誤差に身をさらして、新しい世界モデルを作っていこうではないか。」「はい、ありがとうございます。すぐにはできそうにありませんが、考えてみたいと思います。」

季節が一つ過ぎたくらいの時、ACはAに言ってみた。「今まで守ってくれてありがとう。ありがたかった。でも本当を言うと、心配は消えなかった。もういいのかなと思ったらいつもラッパが鳴った。完璧を目指してみてわかったことだけれど、生き物に完璧なんてない。0でも1でも3でも、10を超えなければいいんだと分かった。だから、Aもこれから、1でラッパを吹かないで、10になったら吹いてみたらどうだろう。私はそれできっと大丈夫だ。」

Aも安心して言った。「そうか、それならそうしてみよう。10になるまではラッパを吹かないことにしよう。」
そうすると、その後の2年はラッパは鳴りません出した。CPがやり直しを命令することもありませんでした。
みんな元気を回復して、兄弟は遊び、母子は一緒に出掛けました。

今から考えてみると、Aは誤差を0にしようと思って、厳密にしてしまったので、かえって誤差だらけになっていたのです。その誤差に対応するためにラッパが鳴り続けていました。
でも、本当に大切な大きな誤差を見逃していたのでした。

タイトルとURLをコピーしました