VIAはポジティブ心理学の分野で開発された、人間の「良いところ」「素晴らしい部分」に焦点を当てた、非常にパワフルなフレームワークです。
性格の強みと美徳(VIA)とは?
一言で言うと、「人のポジティブな性格特性を分類し、測定可能にした科学的な枠組み」です。
心理学者のマーティン・セリグマン博士とクリストファー・ピーターソン博士が中心となり、「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)」が病理的な側面に注目するのに対し、「何が人を幸せにし、人生を充実させるのか?」という問いから、「健全さのハンドブック」として開発しました。
彼らは、時代や文化、宗教を超えて普遍的に「美徳」として尊ばれてきた価値観を調査し、それらを6つの美徳(Virtues)と、その美徳を構成する具体的な行動や感情のパターンである24の強み(Character Strengths)に分類しました。
VIAの基本構造:6つの美徳と24の強み
VIAの考え方の中心となるのが、この分類です。
美徳(Virtues) | 説明 | 構成する「強み」(Character Strengths) |
---|---|---|
1. 知恵と知識 (Wisdom and Knowledge) | 知識を獲得し、それをうまく使うことに関する認知的な強み。 | ①創造性 (Creativity): 物事を新しい方法で考え、行う力 ②好奇心 (Curiosity): あらゆる物事に関心を持ち、探求する力 ③知的柔軟性 (Open-mindedness): 物事を多角的に吟味し、考えを変えることを厭わない力 ④向学心 (Love of Learning): 新しいスキルや知識を習得することに喜びを感じる力 ⑤大局観 (Perspective): 物事の全体像を捉え、他者に賢明な助言ができる力 |
2. 勇気 (Courage) | 内的・外的な困難に立ち向かい、目標を達成しようとする意志の強み。 | ⑥勇敢さ (Bravery): 脅威や困難、苦痛に臆せず立ち向かう力 ⑦忍耐力 (Perseverance): 始めたことを最後までやり遂げる力 ⑧誠実さ (Honesty): 正直で、真実を語り、本物であろうとする力 ⑨熱意 (Zest): 人生に情熱とエネルギーを持って熱心に取り組む力 |
3. 人間性 (Humanity) | 他者と心を通わせ、思いやりのある関係を築く対人関係の強み。 | ⑩愛情 (Love): 他者との親密な関係を大切にし、愛し愛される力 ⑪親切心 (Kindness): 他者に親切で、思いやりがあり、手助けをする力 ⑫社会的知性 (Social Intelligence): 自分や他者の感情を理解し、状況に応じて適切に振る舞う力 |
4. 正義 (Justice) | 健全なコミュニティの維持に貢献する市民的な強み。 | ⑬チームワーク (Teamwork): チームの一員として忠実に貢献し、責任を分かち合う力 ⑭公平さ (Fairness): 全ての人を公平に扱い、先入観を持たない力 ⑮リーダーシップ (Leadership): チームをまとめ、励まし、活動を組織する力 |
5. 節制 (Temperance) | 過剰を戒め、バランスを保つための強み。 | ⑯寛容さ (Forgiveness): 過ちを犯した人を許し、セカンドチャンスを与える力 ⑰謙虚さ (Humility): 自分の功績を過度に誇示せず、ありのままの自分を受け入れる力 ⑱慎重さ (Prudence): 注意深く、軽率な言動を避け、リスクを冒さない力 ⑲自己調整 (Self-regulation): 自分の感情や行動を律し、自制する力 |
6. 超越性 (Transcendence) | 自分よりも大きな存在とのつながりを見出し、人生に意味を与える強み。 | ⑳美的感覚 (Appreciation of Beauty & Excellence): 美や卓越した技能に気づき、感動する力 ㉑感謝 (Gratitude): 良い出来事に気づき、感謝の気持ちを持つ力 ㉒希望 (Hope): 未来に最善を期待し、それを実現するために努力する力 ㉓ユーモア (Humor): 人生に笑いや楽しさを見出し、人を笑わせる力 ㉔スピリチュアリティ (Spirituality): 人生の目的や意味、宇宙との繋がりを信じる力 |
VIAの主な特徴
- 普遍性: これらの強みは、特定の文化や国に限定されるものではなく、世界中の人々に共通して見られるとされています。
- ポジティブな側面に焦点: 弱点を克服することだけでなく、自分の「強み」を認識し、それを活かすことで、幸福感(ウェルビーイング)やレジリエンス(精神的な回復力)が高まるという考えに基づいています。
- 測定可能: VIA研究所(VIA Institute on Character)が提供する無料のオンライン診断(VIAサーベイ)を受けることで、自分の24の強みがどのような順番で現れるかを知ることができます。
自分の「強み」を知り、活かす方法
VIAの最大の価値は、自己理解を深め、実生活に活かせる点にあります。
ステップ1:自分の強みを知る
まずは、公式サイト(「VIA Institute on Character」で検索)で無料のVIAサーベイを受けてみましょう。診断結果では、24の強みがランキング形式で表示されます。
特に上位5つ程度の強みは「シグネチャー・ストレングス(Signature Strengths)」と呼ばれ、その人らしさを最も特徴づける強みです。これらを使うとき、人は自然で、エネルギーに満ち溢れ、充足感を感じやすいと言われています。
ステップ2:強みを意識的に使う
自分のシグネチャー・ストレングスが分かったら、それを日常生活や仕事の中で意識的に使ってみましょう。
- 例1:「好奇心」が強みの場合
- 仕事で新しいプロジェクトが始まったら、背景や目的を積極的に質問してみる。
- 今まで読んだことのないジャンルの本を読んでみる。
- 例2:「親切心」が強みの場合
- 職場の同僚に、小さなことでも感謝の言葉を伝えてみる。
- 困っている人を見かけたら、具体的に何ができるか考えて行動する。
- 例3:「忍耐力」が強みの場合
- 途中で諦めそうになった資格の勉強を、もう一度計画を立てて再開する。
- 長期的な目標を細分化し、一つひとつ着実にクリアしていく。
ステップ3:他者の強みを認識する
自分だけでなく、家族や友人、同僚の「良いところ」をVIAの強みというレンズを通して見てみましょう。相手の行動を「強み」として捉えることで、人間関係がよりポジティブになります。
VIAを活用するメリット
- 幸福感・満足度の向上: 自分の強みを活かすことで、自己肯定感が高まり、日々の生活がより充実します。
- ストレス耐性の向上: 困難な状況に直面したとき、自分の強みを使って乗り越える方法を見つけやすくなります。
- 目標達成の促進: 自分の強みを活かせる方法で目標に取り組むことで、モチベーションを維持しやすくなります。
- 人間関係の改善: 他者の強みを認め、尊重することで、より良いコミュニケーションが生まれます。
まとめ
「性格の強みと美徳(VIA)」は、単なる性格診断ではありません。自分の中にある「最高の自分」を発見し、それを意識的に育んでいくための、科学的で実践的なツールです。
自分の弱点を嘆くのではなく、誰もが持っている素晴らしい「強み」に目を向けることで、より豊かで意味のある人生を送るための羅針盤となってくれるでしょう。
もしご興味があれば、ぜひ一度VIAサーベイを試してみてください。きっと新しい自己発見があるはずです。
自分の「性格の強み」を知ることができる無料のオンライン診断(VIAサーベイ)について、具体的にご紹介します。
VIAサーベイ(無料診断)の概要
この診断は、VIAの理論を開発した「VIA Institute on Character」という非営利組織が、研究と個人の自己理解のために無料で提供しているものです。世界中で数百万人以上が利用しており、日本語にも対応しています。
- 公式サイト名: VIA Institute on Character
- 診断名: VIA Character Strengths Survey (VIAサーベイ)
- 料金: 無料(より詳細な分析レポートは有料オプションとして購入可能です)
- 所要時間: 約15分
- 質問数: 96問
診断の受け方(ステップガイド)
以下に、診断を受けるための手順を分かりやすく説明します。
1. 公式サイトにアクセスする
まず、下記の公式サイトにアクセスします。
VIA Institute on Character 公式サイト
https://www.viacharacter.org/
「TAKE THE FREE SURVEY」をクリック。
2. アカウントを登録する
サイトにアクセスすると、アカウント登録を求められます。
メールアドレスとパスワードを設定して、簡単な登録を済ませてください。GoogleやFacebookアカウントでの登録も可能です。
3. 言語を選択し、サーベイを開始する
アカウント登録後、サーベイを受ける画面に進みます。
言語選択のドロップダウンリストがありますので、そこで「日本語」を選択してください。そうすると、質問がすべて日本語で表示されます。
4. 質問に答える
96個の質問が順番に表示されます。
「これはとても私らしい」「これはまあまあ私らしい」といった5段階の選択肢から、自分に最も当てはまるものを選んでいきます。
【回答のポイント】
- 深く考えすぎない: 直感的に「これだ」と感じるものを選んでいくのがおすすめです。
- 正直に答える: 「こうありたい自分」ではなく、「ありのままの自分」で回答することが、正確な結果を得るための鍵です。
- 時間に余裕を持つ: 途中で中断もできますが、15分ほど集中できる時間を見つけて一気に受けるのが良いでしょう。
5. 結果を確認する
全ての質問に回答し終えると、すぐに結果が表示されます。
24の性格の強みが、あなたの中で最も強く表れているものから順番に1位から24位までランキング形式で表示されます。
特に、上位5つ前後の強みは「シグネチャー・ストレングス(Signature Strengths)」と呼ばれ、あなたの個性を最も象徴する強みです。まずはこの上位の強みに注目してみてください。
診断後のヒント
- 結果は「良い/悪い」ではありません: ランキングの下位にある強みは「弱点」ではなく、単に他の強みに比べて現れる頻度や優先度が低いというだけです。誰もが24全ての強みを持っています。
- 自己理解のツールとして活用する: 「なるほど、自分にはこういう一面があったのか」「だからこの作業は楽しいんだな」というように、結果を自己理解のヒントとして使ってみましょう。
- 友人と共有してみる: 友人や家族と一緒に受けて、お互いの結果を見せ合うのも非常に面白いです。相手の強みを知ることで、コミュニケーションが円滑になることもあります。
この診断は、自分のポジティブな側面に光を当てる素晴らしい機会です。ぜひ気軽に試してみて、あなたのユニークな「強み」を発見してみてください。