三層構造で整理すると、臨床の迷いがかなり減ります。
ポイントは「どの理論が正しいか」ではなく、
👉 “今この患者はどの層で関わるべき状態か”を見極めて、上下に行き来すること
です。
全体像(結論)
- 下層:支持的精神療法(Supportive)
→ 崩壊を防ぐ/生活と関係を維持する - 中層:MBT
→ メンタライジング(心を考える機能)を回復する - 上層:TFP+ACT
→ 関係の構造理解(TFP)+行動変容(ACT)
👉
Supportive → MBT → TFP/ACT の順で“上に乗る”
1. 下層:支持的精神療法(Supportive)
役割
👉 「とにかく壊さない」
- 自傷防止
- 生活維持
- 治療継続
状態
- 強い不安・混乱
- 現実検討低下
- メンタライジング崩壊
逐語
- 「今はかなりしんどい状態だね」
- 「まず今日はここを乗り切ることを一緒に考えよう」
- 「次の一歩だけ決めよう」
技法
- 助言
- 構造化
- 安心の提供(ただし過剰保証はしない)
👉
“深める”より“保つ”
2. 中層:MBT
役割
👉 「考えられる状態に戻す」
状態
- 感情は強いが、対話は可能
- 視点が固定し始めている
逐語
- 「何があってそう感じたのか見てみよう」
- 「私の見え方は少し違うかもしれない」
- 「今ここで何が起きている?」
技法
- トラッキング
- 明確化
- 視点の導入
👉
“壊れない範囲で広げる”
3. 上層:TFP+ACT
役割
👉 「理解して、かつ変える」
状態
- メンタライジングが保たれている
- 関係を扱える
TFP逐語
- 「理想化と脱価値化が両方出ている」
- 「私が2つの違う存在として感じられている」
ACT逐語
- 「その感じを持ったまま、どう行動したい?」
- 「関係をどう扱いたい?」
👉
“構造を見て、行動を選ぶ”
4. 層の見分け方(超実用)
これだけ見ればいい:
👉 「この人はいま“考えられる状態”か?」
YES(考えられる)
→ MBT or TFP/ACT
NO(考えられない)
→ Supportive
さらに分けると:
- 考えられるが不安定 → MBT
- 安定して考えられる → TFP/ACT
5. セッション内の動き(リアル)
実際はこう動きます:
- 崩れる → Supportive
- 落ち着く → MBT
- 余裕が出る → TFP/ACT
- 刺激で崩れる → Supportiveに戻る
👉
上下に“揺れる”のが正常
6. 具体例(統合逐語)
患者:「先生も信用できない」
① Supportive
- 「今かなり不安が強くなっているね。まずここで一緒に落ち着こう」
② MBT
- 「何があってそう感じたのか、一緒に見てみようか」
③ TFP
- 「さっきの信頼できる感じと、今の不信が両方出ている」
④ ACT
- 「その両方を感じながら、ここにいることはできる?」
7. よくある失敗(重要)
■ いきなり上層に行く
→ 崩壊(特にTFP)
■ ずっと下層にいる
→ 変化しない
■ MBTを飛ばす
→ 理解も変化も起きない
8. 逆転移の整理
実は層のズレはここに出ます:
- 焦る → 上層に行きすぎる
- 怖い → 下層に留まりすぎる
👉
自分の感情が“層のズレ”の指標
9. 一行での核心
👉
Supportiveで支え、MBTで回復し、TFP/ACTで進む
まとめ
この三層モデルの本質は:
- 技法の違いではなく
- “心の状態に応じた足場の選択”
そして最も重要なのは:
👉 「今この人は、どの高さの会話に耐えられるか?」
必要なら、
- 外来15分でどう三層を回すか
- 入院環境での使い分け
- 統合失調症圏での三層モデルの変形
までかなり実務寄りに展開できます。
