新聞連載「ためこみ症」

仕事も恋愛も失敗し、うつ病に 孤独な53歳を襲った「ためこみ症」

連載「ためこみ症」①
 食卓は書類やカップ麺の容器で埋まり、椅子は傘立て代わりになっていた。床にはチラシや服、ごみ袋が積み重なり、歩くすきまもない。

 福岡県内の女性(53)の部屋は、ものであふれていた。

 女性は、ものを捨てられず、生活が破綻(はたん)する精神疾患「ためこみ症」を抱えている。

 それほど価値がないものをためこみ、どうしても手放すことができない。この病気の背景には、「心の傷」があります。

 3歳のときに両親が離婚。母と2人、祖父母や、証券会社で働く独身の叔母の家を転々として暮らした。

 おとなしく自己主張が苦手だったせいか、小中高といじめられた。不登校を経て高校2年で退学。その後、システムエンジニアとして働くようになった。

 世はITバブル直前。気づけば徹夜で残業するほど、仕事にのめり込んだ。

 1年後にはローンを組み、3LDKの中古マンションを購入した。母と2人、気兼ねなく住める家がずっと欲しかった。

 25歳のときだった。転勤で自宅を離れ、一人暮らしを始めた。だが職場で上司と衝突し、仕事の失敗も重なった。

 追い打ちをかけるように、結婚を前提につきあっていた彼とも破局した。

 気分が落ち込み、夜も眠れなくなった。アウトレットで服や靴を買いこんでは自分を慰めた。

 激務で体を壊したこともあり、29歳のときに退職した。大量の服や靴、1千冊以上の本とともに、福岡のマンションに戻った。

 契約社員として働き始めたが、人間関係がうまくいかず、職場を転々とした。ある日、プログラミングをしている最中に、何も考えられなくなった。うつ病だった。

 朝がつらく、布団から抜け出せない。それなのに母は「起きろ」という。私のことを、全然わかってくれない――。

 そんなストレスを、テレビ通販での買い物にぶつけた。

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