誤差修正知性 強迫性障害-2

誤差修正知性の枠組みで面接場面を考えると、かなり独特なものになります。

通常の認知行動療法では、

  • 「その考えは本当ですか?」
  • 「確率はどれくらいですか?」

などを検討します。

しかし誤差修正知性モデルでは、

強迫観念の真偽は二次的な問題

になります。

焦点は、

「なぜその誤差修正が終わらないのか」

です。


事例1 手洗い強迫

患者

ドアノブを触ったので手を洗いました。

でもまだ菌が残っている気がします。

治療者

残っている可能性はありますか。

患者

あります。

治療者

100%なくなったと言えますか。

患者

それは言えません。

治療者

では今の苦しさは、

菌がいることですか。

それとも100%確認できないことですか。

患者

・・・

確認できないことかもしれません。


ここで治療者は

「菌はいません」

とは言わない。

むしろ

100%保証不能

を認める。


事例2 ループの可視化

患者

手洗いをすると少し安心します。

治療者

その安心はどのくらい続きますか。

患者

数分です。

治療者

すると、

手洗いは問題を解決しているのでしょうか。

それとも数分だけ休憩しているのでしょうか。

患者

・・・

休憩かもしれません。


ここでは

症状の無意味さ

を指摘しているのではない。

ループ構造を観察している。


事例3 内容から構造へ

患者

今回は菌ですけど、

昔は戸締まりでした。

治療者

菌と鍵は似ていますか。

患者

全然違います。

治療者

苦しみ方はどうですか。

患者

同じです。

治療者

何が同じなのでしょう。

患者

確認しても終わらない感じです。


これは非常に重要です。

内容

ではなく

終了不能性

が病理だと見えてくる。


事例4 「十分」を探す

患者

本当にきれいになったか分からない。

治療者

どこまできれいなら終われますか。

患者

完全にきれいなら。

治療者

完全とはどういう状態でしょう。

患者

菌がゼロ。

治療者

人間の手で菌ゼロは可能でしょうか。

患者

無理です。

治療者

すると現在の目標は、

達成不能な目標になっていませんか。

患者

そうかもしれません。


ここでは

認知の歪み

を修正しているのではなく、

終了条件

を検討している。


事例5 「やめる訓練」

患者

洗いたくて仕方ありません。

治療者

洗わないように我慢しましょう。

患者

つらいです。

治療者

我慢することが目標ではありません。

「終わらない感じがあるまま終わる」

ことが目標です。

患者

終わってないのに終わるんですか。

治療者

はい。

今までは

終わった感じが出たら終わっていた。

今度は

終わった感じがなくても終わる練習です。


これはERPを誤差修正知性で言い換えたものです。


事例6 自由意志の回復

患者

自分でも馬鹿らしいと思っています。

治療者

洗いたいですか。

患者

洗いたいです。

治療者

洗いたくないですか。

患者

洗いたくないです。

治療者

両方ですね。

患者

はい。

治療者

すると問題は

洗いたい気持ちではなく、

洗いたい気持ちしか選べないことかもしれません。


ここでは

症状を消す

のではなく

選択肢を増やす

ことを目標にする。


誤差修正知性的な面接の特徴

この理論を徹底すると、面接で最もよく出てくる問いは、

  • 本当に危険か?

ではなく、

  • いつ終わるのか?
  • 誰が終わりを決めるのか?
  • 終了条件は何か?
  • その終了条件は実現可能か?
  • 終わった感じがなくても終われるか?

になります。

つまり患者の注意を、

「汚染」「戸締まり」「加害恐怖」などの内容から、「終われない誤差修正ループそのもの」へ移す。

これが誤差修正知性による強迫性障害治療の中心的な面接技法の一つになるように思います。

さらに発展させると、治療者は「強迫観念の反証者」ではなく、**「終了判定の共同研究者」**になります。

患者と一緒に、

人間はどのようなときに「十分」と判断できるのか

を探究する作業になるでしょう。

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