理論内部での主要な論争
1. 段階説vs断続平衡説
- グールドとエルドリッジの「断続平衡説」(1972年)は、進化が常に漸進的ではなく、長期の停滞と急速な変化が交互に起こると主張
- ダーウィンの漸進主義への挑戦として注目されたが、メカニズムは既存の理論内で説明可能
2. 中立進化説
- 木村資生の中立説(1968年):分子レベルでの多くの変異は自然選択ではなく遺伝的浮動による
- 自然選択の万能性への重要な批判
- 現在は選択説と統合されている
3. 適応主義批判
- グールドとルウォンティンによる批判(1979年):すべての形質を適応として説明しようとする傾向への警告
- 制約、歴史的偶然、スパンドレル(副産物)の重要性を強調
未解決の科学的課題
4. 複雑性の進化
- 眼や鞭毛など複雑な器官の段階的進化経路の詳細
- 「還元不能な複雑性」の主張は科学的には否定されているが、詳細な経路解明は研究継続中
5. 化石記録のギャップ
- カンブリア爆発など急速な多様化の説明
- 移行化石の不足(ただし、継続的に発見されている)
- 保存の偏りという地質学的制約
6. 発生と進化の統合(エボデボ)
- 遺伝子型から表現型への複雑な経路
- 発生制約が進化にどう影響するか
- HOX遺伝子など制御遺伝子の役割
拡張進化総合説からの提起
7. エピジェネティクスの遺伝
- DNAの変化を伴わない形質の遺伝
- ラマルク的要素の再評価(ただし元の理論とは異なる)
8. ニッチ構築理論
- 生物が環境を改変し、それが選択圧を変える
- 一方向的選択観への批判
9. 可塑性主導進化
- 表現型可塑性が進化の方向を導く可能性
重要な留意点
これらの批判や議論の多くは:
- 進化の事実自体を否定していない
- むしろ進化論を精緻化・拡張しようとする試み
- 科学的方法論に基づく正当な学術論争
- 現代総合説の枠組み内での修正が多い
進化論は「使い古された19世紀の理論」ではなく、遺伝学、分子生物学、古生物学、生態学などからの新知見を取り込んで常に発展している動的な理論体系です。
