TF-CBT(トラウマフォーカスト認知行動療法)について詳しく説明します。
概要
TF-CBT(Trauma-Focused Cognitive Behavioral Therapy)は、子ども・青年(3〜18歳)とその養育者を対象としたトラウマ治療の標準的アプローチです。1990年代にJudith Cohen、Anthony Mannarino、Esther Deblingerらによって開発されました。
特徴
- 子どもと養育者が一緒に治療に参加する(養育者の関与が不可欠)
- 認知行動療法・暴露療法・家族療法を統合したモデル
- 世界100か国以上で実施されており、最もエビデンスの厚い子ども向けトラウマ治療の一つ
対象となるトラウマ
性的虐待・身体的虐待・ネグレクト・家庭内暴力・自然災害・事故・喪失体験・戦争・テロなど幅広いトラウマに対応。
PRACTICE:8つのコアコンポーネント
TF-CBTは PRACTICE という頭字語で整理された8つの構成要素からなります。
| 頭文字 | 要素 | 内容 |
|---|---|---|
| P | Psychoeducation(心理教育) | トラウマ反応・PTSDについて子どもと養育者が学ぶ |
| R | Relaxation(リラクセーション) | 腹式呼吸・筋弛緩法・マインドフルネスなど |
| A | Affective Modulation(感情調整) | 感情の識別・感情コントロールのスキル習得 |
| C | Cognitive Coping(認知コーピング) | 思考・感情・行動の関係を学ぶ(認知の三角形) |
| T | Trauma Narrative(トラウマナラティブ) | トラウマ体験を物語として語り、処理する |
| I | In Vivo Mastery(イン・ビボマスタリー) | 回避している場所や状況への段階的直面 ※必要な場合のみ |
| C | Conjoint Sessions(合同セッション) | 子どもと養育者が一緒にトラウマナラティブを共有 |
| E | Enhancing Safety(安全スキル強化) | 再被害防止・安全なボディオートノミーの教育 |
治療の流れ
フェーズ1:安定化(P・R・A・C)
↓
スキルを身につけ、トラウマに向き合う準備をする
フェーズ2:トラウマ処理(T・I)
↓
トラウマナラティブを作成・精緻化・処理する
フェーズ3:統合(C・E)
↓
養育者との共有・安全スキルの強化・治療のまとめ
通常は週1回・60〜90分×12〜25セッションが目安です。
養育者セッションの役割
TF-CBTの大きな特徴は、養育者(親・里親など)が毎回並行セッションに参加する点です。
養育者セッションでは:
- 子どもと同じスキルを習得する
- 子どものトラウマ反応への対応方法を学ぶ
- 養育者自身の二次的トラウマ反応を処理する
- 合同セッションに向けて準備する
養育者の関与度が高いほど、治療効果が上がることが研究で示されています。
トラウマナラティブとは
治療の核心部分。子どもが自分のトラウマ体験を:
- 絵本・詩・漫画・歌・手紙など自由な形式で表現
- セッションごとに少しずつ詳細を加えて精緻化
- 認知処理(「自分のせいではない」など)を組み込む
最終的に養育者と共有することで、秘密をなくし・つながりを回復させることが目標です。
効果
| 症状 | 効果 |
|---|---|
| PTSD症状 | 大幅な軽減 |
| うつ・不安 | 改善 |
| 行動問題 | 減少 |
| 羞恥心・自責感 | 軽減 |
| 養育者のストレス | 軽減 |
米国のSAMHSA(薬物乱用・精神保健サービス局)の「実証に基づく実践」リストにも掲載されており、WHO(世界保健機関)もガイドラインで推奨しています。
日本での状況
- 2010年代以降、日本でも普及が進んでいる
- 子どもの虐待対応・児童相談所・医療機関での導入事例あり
- TF-CBT Japanなどの研修体制が整備されつつある
- ただし、専門的トレーニングを受けたセラピストはまだ少ない
PEとの主な違い
| TF-CBT | PE | |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 主に3〜18歳 | 主に成人 |
| 養育者の関与 | 必須 | 基本なし |
| ナラティブ形式 | 創造的・柔軟 | 口頭での想起が中心 |
| スキル構築 | 前半に集中 | 比較的少ない |
| セッション数 | 12〜25回 | 8〜15回 |
特定の場面(例:性的虐待への適用、複雑性トラウマへの対応、学校での実施など)について、さらに詳しく知りたい場合はお知らせください。
