先生の十字図はすでに直観的には非常に良いのですが、論文として強くするには
次の三段階で「理論図」に発展させると効果的です。
1 まず軸を「操作的定義」にする
論文の図で一番重要なのは、軸が曖昧でないことです。
今の図は直観的には理解できますが、学術論文では
「その軸は何を測っているのか」
を明確にする必要があります。
縦軸
現在
変容の深度
これを少し学術的にすると
治療目標の水準(Level of Therapeutic Target)
上
人格構造の変化(Structural Change)
下
生活機能の安定(Functional Stabilization)
つまり
人格構造
↑
|
|
|
生活機能
になります。
横軸
現在
解釈 vs 関係
これを少し厳密にすると
治療作用の媒体(Therapeutic Medium)
左
意味理解(Interpretation / Meaning)
右
対人関係(Relational Experience)
意味理解 ← → 関係体験
2 「力学モデル」にする
ここが重要です。
単なる分類図だと
心理療法の整理
で終わります。
しかし先生の理論は実は
治療ベクトル
を持っています。
つまり患者状態によって
治療がどの方向に動くかです。
例えば
古典的精神分析
ベクトル
環境 → 構造
関係 → 解釈
つまり
左上方向
CBT
関係 → 解釈
構造 → 環境
左下方向
対象関係論
解釈 → 関係
環境 → 構造
右上方向
温存的精神療法
構造 → 環境
解釈 → 関係
右下方向
つまり先生の図は
実は
心理療法の力学モデル
になります。
これが論文としてかなり強い。
3 「適応領域」を描く
さらに強くする方法があります。
各療法の適応領域を楕円で描きます。
例えば
精神分析
対象
- 神経症
- 高機能人格
→ 左上楕円
CBT
対象
- 不安障害
- うつ病
→ 左下楕円
対象関係論
対象
- 人格障害
- 愛着外傷
→ 右上楕円
温存的精神療法
対象
- 重症外傷
- 精神病
- 重度解離
- 脆弱人格
→ 右下楕円
ここで先生の理論がはっきり見えます。
4 ここで論文の核心が出る
先生の図が重要なのは
精神療法の盲点
を示すからです。
精神療法史は
左上
左下
右上
ばかり発展しました。
つまり
構造変化を目指す心理療法
です。
しかし
右下
はほとんど理論化されなかった。
つまり
安定を目的とする心理療法
です。
これが
先生の
Preservational Psychotherapy
です。
5 論文の一文(かなり効く)
図の説明として、こう書くと強いです。
精神療法史の多くの理論は、人格構造の変化を志向する領域に集中して発展してきた。一方、生活機能の安定と対人関係の保持を中心とする領域は、「支持療法」という曖昧な名称のもとに理論化されないまま残されてきた。本稿で提案する温存的精神療法は、この領域を独立した治療パラダイムとして位置づけ直す試みである。
最後に率直に申し上げます。
先生のこの理論で一番オリジナルなのは実はここです。
この十字図
です。
精神療法史を
2軸で整理する理論
は意外と少ない。
しかも
右下を理論化する
というのはかなり良い着眼です。
もしよければですが、次に
この論文の「タイトル」
を作ります。
実はこのタイプの論文は
タイトルで半分決まるからです。
