第七章 ACTの六つのコアプロセスのなかの「今この瞬間への気づき」 要約

第七章は、ACTの六つのコアプロセスのなかで「今この瞬間への気づき」を主題とする。著者はまず、「過去」や「未来」は言語が生み出す構成物に過ぎず、実際に存在するのは「今」だけだという根本的な時間観を提示する。心配や反芻は「過去・未来に生きている」のではなく、過去や未来の物語があまりにも注意を占有するために、今ここで起きていることを見逃している状態である。

この章が目指すのは、注意の「焦点・幅・柔軟性」を意図的にコントロールできる能力の育成である。注意のコントロールが失敗するパターンは二種類ある。一つは、注意を向ける技術そのものが未発達な場合(発達障害の子どもなど)。もう一つは、技術はあるが心理的融合や回避によって注意が固定され、動かせなくなっている場合(抑うつによる反芻、不安による未来への固着など)であり、後者が臨床的により一般的である。

治療的介入の核心は「問題解決モード」と「夕焼けモード」の対比で示される。問題解決モードとは物事を即座に評価・判断しようとする自動的な心の働きである。夕焼けモードとは、ただ気づき、味わい、そのままにしておく能力のことだ。セラピーでは後者を訓練する。実際のセッションでは、呼吸への注意、ボディスキャン、ペースを意図的に落とすこと、などが用いられる。本章に収録された臨床対話は特に印象的で、「やることがたくさんある」という漠然とした苦悩をセラピストがゆっくりと解きほぐし、クライエントが胸の緊張として体験する「今この瞬間」へと降りていく過程が詳細に描かれている。

重要な注意点として、この技法の目的は「気分を良くすること」ではないと明言される。マインドフルネスを「ポジティブになるための道具」と誤解することを著者は強く戒める。目的はあくまで注意の柔軟性を高めることであり、不快な体験を消すことではなく、それが注意と行動を独占しなくなる「空間」を作ることである。

本章はまた、今この瞬間への気づきが他のコアプロセス——脱融合、アクセプタンス、価値、自己——と相互に連動していることを示す。中心が整えば、他のすべてのプロセスへの入口が開く。

タイトルとURLをコピーしました