EU型の「集合的自立」は理論的には可能。
しかし前提条件が厳しく、日本を含む東アジアでは構造的困難が大きい。
順を追って整理します。
Ⅰ.EU型「集合的自立」とは何か
EU型モデルの核心は:
主権の一部を共有することで、単独国家よりも自立性を高める
という逆説です。
代表的主体は
European Union。
特徴:
- 単一市場
- 通貨統合(ユーロ圏)
- 規制主権(ブリュッセル効果)
- 集団交渉力
EUは核を持たない加盟国も含みつつ、
全体としては大きな影響力を持つ。
これは
共有された主権による戦略的自律
と呼べる。
Ⅱ.なぜEUでは可能だったのか
1.歴史的前提
- 二度の世界大戦
- ナチズムと冷戦という巨大トラウマ
- 和解の制度化
特に
France
と
Germany
の和解は決定的でした。
敵対の反復を止める強い動機があった。
2.安全保障の外部委託
EUは軍事統合が弱い。
安全保障は長く
NATO
に依存してきました。
つまり:
軍事的不安を外部に固定し、内部統合を進めた。
3.価値観の相対的同質性
- 民主主義
- 法の支配
- 市場経済
の共有。
Ⅲ.東アジアで可能か?
関係主体は:
- Japan
- China
- South Korea
- Taiwan
構造的課題は三つ。
1.歴史認識の未統合
欧州は和解を制度化した。
東アジアでは:
- 戦争記憶
- 植民地問題
- ナショナル物語
が競合したまま。
トラウマ処理が完了していない。
2.体制の非対称性
EUは民主主義が前提。
東アジアは体制多様。
政治体制が異なると、
主権共有は困難。
3.安全保障ジレンマの継続
台湾海峡、南シナ海など、
緊張が現在進行形。
統合動機より警戒が強い。
Ⅳ.それでも可能性はあるか
完全なEU型は困難でも、
部分的集合自立は可能。
1.機能的統合
- 経済連携
- 半導体供給網
- エネルギー協力
- 災害対応
安全保障を除いた領域から始める。
2.価値共同体の限定形成
民主主義国家間の枠組み強化。
たとえば:
- 日韓協力
- 日豪印枠組み など
(軍事的連合ではなく機能的連携)
3.「対中」ではなく「自律」の物語
EU統合は「反独」ではなく「共存」の物語だった。
東アジアも:
対抗ではなく相互依存安定
を語れるかが鍵。
Ⅴ.日本にとっての意味
日本が集合的自立を志向する場合:
- 単独核武装より摩擦が小さい
- 承認を得やすい
- 不安を共有化できる
しかし:
- 国内ナショナリズムとの緊張
- 主権共有への心理的抵抗
が課題。
日本の自立感は、
単独主権より
ネットワーク中心性
から得られる可能性が高い。
Ⅵ.情動力学的評価
集合的自立は:
- 恐怖を分散する
- 承認を相互化する
- 屈辱物語を緩和する
ただし:
- 内部不信が強いと崩壊する
- ポピュリズムが統合を弱める
Ⅶ.最終結論
EU型完全統合は東アジアでは困難。
しかし:
機能的・段階的な集合自立は可能。
鍵は:
- 歴史ナラティブの再編集
- 経済的相互依存の深化
- 恐怖を共有する危機管理枠組み
