なぜあの人には話しすぎてしまうのか?「聞き出す人」が無意識にやっていること
「自分は相手の話をしっかり聞いている」と自覚している人は多いだろう。しかし、私たちが学校で学んできた「聞く姿勢」と、ビジネスで求められる「聞く力」はまったく別物だという。相手の言葉の裏にある本音を引き出すために必要な「聞くスキル」について解説する。
生成AIは文章をつくったり、まとめたりするのが得意です。圧倒的に速いだけでなく、AIの進化とともに、文章のクオリティも驚くほど高いものになってきています。
しかし、本稿のテーマである「聞き出す力」は、まだまだAIには代替されない、と私は考えています。
AIによる「聞く」作業と人が行う「聞き出す」の違い
「聞き出す力」の一番のポイントは、相手との会話のなかで、相手が気づいていない思いや本音がつまった言葉を引き出すことです。その人独自の経験から導き出された実感の込もった言葉をいかに引き出せるかが鍵を握ります。
ちなみにこのことは、「年の功だけあってやはり年長者の意見が優れている」という単純な話ではありません。豊富な経験を積んだ50代だからこそ話せる実感のこもった言葉があるのと同様に、今の時代を生きている20代の感性と経験値に基づいて話せるオリジナルの言葉も確かに価値がある、ということです。
どちらにしても、AIが生成するあくまで膨大なデータセットの学習に基づいた一般的な言葉とは、まったく異なります。
一人ひとりが持っている、その人なりの言葉を聞き出すためには、やはり、人と人の関わりが不可欠だと私は思います。
「でも、AIも聞いてきますよね?」。そう思われた方もいらっしゃるかもしれません。たしかに、AIはこちらの入力に対して質問を投げかけてくれます。
「どっちのパターンがいいですか?」「どっちのまとめ方がいいですか?」「こういう整理もできますよ?」――。
しかし、それらの質問はすべて、“AI側で答えを出す”ことを目的としたものです。決して相手の隠れた思いや本音を聞き出すことを目的にはしていない。
悩みに対する答えはいつだってAI側ではなく、AIに聞いている本人のなかにある。生成AIがその前提に立って質問をするようにならない限り、「聞き出す力」がAIに代替されることはないでしょう。
「この人と話していると(良い意味で)つい話しすぎてしまう」「この人に話を聞いてほしい」と思われる人こそ、仕事においてコミュニケーション能力が高い人です。
生成AIは膨大なデータを基に言葉を整理し、精緻な答えを出すことは得意ですが、仕事で悩んでいる相手が自ら解決に向かうように関わることは決して得意ではありません。
だからこそ、今からでもあなたが「聞き出す力」を身につける価値は十分にあると私は考えています。
ビジネスにおける「聞く力」は
ただ座って話を聞くことではない
「先生のお話をちゃんと聞きましょう」
あなたが小学生だった頃をふりかえると、一度はこんなふうに言われた経験があるのではないでしょうか。
当時を思い出してみてください。その時の「聞く」は、どんな「聞く」でしたか?
余計なことをしゃべらずに、大人しく座って、先生の話を聞く。つまりは、受け身の「聞く」だったのではないでしょうか?
今あらためて考えてみると、その時の「ちゃんと聞く」は、単なるマナーや礼儀の範疇だったのではないかと思います。
一方で、ビジネスにおける「聞く」は、この受け身の「聞く」とは似て非なるものだと私は思います。
大事な会議の場で、隣の人とぺちゃくちゃおしゃべりをしてクライアントの発言を聞いていない人は、見たことがありません。
ビジネスで求められる「聞く」とは、単に相手の言葉を額面通りに頭に入れることではなく、「なぜ相手はそんな発言をしたのか」「その言葉の裏側にある真意とは何か」など、自ら能動的に相手の頭の中にある本音や思いを掘り起こしていくための「聞く」です。
他者の言葉に耳を傾け、相手がまだ言葉にできていないものを引き出す、静かな攻めのスキルと捉えることもできるのではないでしょうか。
クライアントやチームメンバーが抱える悩みや本質的なニーズを掘り起こし、言葉に変換するための手段であり、すべての仕事の始まりでもある――それがビジネスにおける「聞く」と言えるでしょう。
本稿では「聞く」を受け身ではなく、一歩深く踏み込んだ攻めのスキルとして、「聞き出す力」と定義していきます。
そもそも、私たちは「聞き出す」以前に「聞く」についても、じつはきちんと教わらないまま社会人になっている人がほとんどです。
かつて「読み・書き・そろばん」と言われていた時代もありました。さすがにそろばんに力を入れている授業は最近少ないと思いますが、「読み・書き」は今でも基本的な力として学校の授業でも丁寧に扱われています。
読み・書きは教わる。でも、聞き方はほとんど教わらない。先述したように聞く姿勢や聞く態度は教わっても、スキルとしての「聞き方」を深く学べる時間は、学校のなかにはありません。
相手の話に耳を傾けるのはもちろん、その奥にある本音や思いまでそっと引っ張り出してくる。
そんな「聞き出す力」を意識的に身につけることは、他の人がきちんと教わっていない分だけ、あなたの強みになるはずです。
