第9章 世界を取り込む
これまでの三つの章では、認知の融合を解くためのスキルを学んできた。融合した思考にラベルを付け(第6章)、闘いを手放し(第7章)、不快な内的体験を受容する(第8章)こと――これらはすべて、私たちを思考の牢獄から解放するための内的な作業だった。しかし、ここで一つの疑問が生じる。闘いを手放し、不快な思考や感情を受け入れた後、私たちは何と向き合えばいいのだろうか?
その答えは、私たちを取り巻く現実の世界にある。私たちは長い間、内面の戦いに忙殺されて、周囲の世界に注意を向けることを忘れていた。思考の渦に巻き込まれている間、私たちは実際に生きている「今この瞬間」から目をそらしていたのである。
本章では、第四のスキルである「マインドフルネス」――すなわち、今この瞬間の現実に完全に注意を向けること――について探っていく。これは、内面から世界へと意識を拡張するプロセスである。
内面から世界へ
ここで、これまでの学びを整理してみよう。私たちは思考にラベルを貼り、思考との闘いを手放し、不快な思考や感情を受容することを学んだ。これらのスキルは、私たちを思考の支配から解放する。しかし、解放された後に何もなければ、私たちは空虚な空間に取り残されることになる。
マインドフルネスは、その空虚な空間を「世界」で満たす。私たちはもはや思考と闘う必要がないのだから、そのエネルギーを周囲の世界に注ぐことができる。私たちは目を開き、耳を澄まし、肌で感じる。私たちは実際に生きている世界――そこには美しさもあり、困難もあるが、間違いなく「現実」がある――に意識を向けるのである。
アンソニーを考えてみよう。彼はずっとジャケットにこびりついた思考に注意を奪われていた。彼の意識はあの夜のレストラン、あの老人の鼻、あのくしゃみに固定されていた。しかしマインドフルネスを実践すれば、彼は意識を「今ここ」に戻すことができる。彼は「今、私はこの部屋にいる」「今、私はこの空気を吸っている」「今、私はこの椅子に座っている」という現実に注意を向ける。彼の意識は過去の記憶から解放され、現在の現実に開かれるのである。
注意のトレーニングとしてのマインドフルネス
マインドフルネスは、注意のトレーニングである。私たちの注意は、習慣的に過去や未来に漂い、あるいは思考や感情に奪われる。この注意の散漫さは、OCDによってさらに強化される。私たちは強迫観念に注意を奪われ、その結果、周囲の世界から切り離されてしまう。
マインドフルネスの練習は、この散漫な注意を「今ここ」に戻すトレーニングである。それは、注意を対象に固定するのではなく、注意が漂い去ったときに優しく戻すというプロセスを繰り返すことだ。まるで子犬を訓練するように――注意が逃げたら、静かに、しかし確実に、再び連れ戻す。
ソフィーは、電話を切った後も「本当に両親を愛しているのか」という思考に注意を奪われていた。彼女の意識は、その疑問をぐるぐると回り続けていた。マインドフルネスを実践すれば、彼女はその思考に気づき、「ああ、またその思考に注意が行っているな」と認識し、優しく意識を周囲の環境に戻すことができる。彼女は部屋の明かりに気づき、外の音を聴き、自分の呼吸を感じる。彼女の注意は、思考のループから現実の世界へと戻ってくるのである。
五感を通じて世界を取り込む
マインドフルネスの最も基本的な実践は、五感を通じて世界に注意を向けることだ。私たちは思考や感情に没頭するとき、視覚や聴覚、触覚といった感覚を無視しがちである。しかし、これらの感覚は私たちを「今ここ」に繋ぎとめる強力な錨(いかり)となる。
「五感のグラウンディング」というエクササイズを試してみよう。これは、周囲の環境に注意を向けるための簡単な練習だ:
- 五つのものを見る――周囲の五つの物に注意を向ける。色、形、質感に気づく。
- 四つのものを触る――自分の周りの四つのものに触れ、その感触に注意を向ける。温度、質感、硬さを感じる。
- 三つの音を聴く――周囲の三つの音に注意を向ける。遠くの音も近くの音も、区別せずにただ聴く。
- 二つの匂いを嗅ぐ――周囲の二つの匂いに注意を向ける。それは空気の匂いかもしれないし、自分の衣服の匂いかもしれない。
- 一つの味を味わう――口の中の味や、何か一口食べたときの味に注意を向ける。
このシンプルな練習は、あなたの意識を思考の世界から現実の世界へと引き戻す。ルーが息子と海辺にいるとき、この練習をすれば、彼の注意は「将来の疎外」という思考から、実際の瞬間――砂の感触、波の音、潮の香り、息子の笑い声――へと移行するだろう。
注意を「何に」向けるか
マインドフルネスは、注意を「何に」向けるかも重要である。私たちは単に「注意を向ける」だけでなく、「価値あるもの」に注意を向けることができる。
ルーにとって、息子との時間は価値あるものだ。マインドフルネスを実践するとき、彼は単に今この瞬間に注意を向けるだけでなく、「息子と一緒にいる」という価値ある瞬間に注意を向けることができる。彼の注意は、不安や恐怖ではなく、愛やつながりに向けられる。
ソフィーにとって、両親との関係は価値あるものだ。彼女は「本当に愛しているか」という疑問に注意を奪われるのではなく、実際に両親と話すときに、彼らの声の温かさや、会話の内容、共有する笑いに注意を向けることができる。
マインドフルネスは、注意を「何に」向けるかを選ぶ自由をも与える。そしてその選択は、私たちの価値観に基づいて行うことができる。
実践:注意を訓練するエクササイズ
本章の実践的なエクササイズは、日常の中でマインドフルネスを練習するためのものだ。
- 「今」に気づく瞬間を作る――一日に数回、一時停止して「今、私はどこにいるか?」「今、私は何をしているか?」「今、私の周りで何が起こっているか?」と自問する。これは数秒でできる。
- 日常活動をマインドフルに行う――歯を磨くとき、シャワーを浴びるとき、食事をするとき、歩くときに、その活動に完全に注意を向ける。歯ブラシの感触、水の温度、食べ物の味、足の裏の感覚――これらの感覚に注意を向ける。
- 「注意が逸れた」ことに気づく練習をする――注意が過去や未来に漂っていることに気づいたら、それを責めずに、ただ「ああ、注意が逸れたな」と認識し、優しく現在に戻す。この気づき自体が、マインドフルネスの練習の一部だ。
- 「五感のアンカー」を使う――強い不安や強迫観念に襲われたとき、五感のいずれかに注意を集中させる。例えば、呼吸の感覚に集中するか、足の裏が床に触れる感覚に集中する。これは、あなたを今この瞬間に繋ぎとめる。
世界を取り込むことがもたらすもの
マインドフルネスを実践することで、あなたは徐々に「世界」との関係が変わっていくのを感じるだろう。あなたはもはや内面の戦いに閉じこもっているのではなく、世界と共に生きている。あなたは思考や感情に振り回されるのではなく、それらを感じながらも、世界に開かれている。
これは、苦しみが完全に消えることを意味しない。しかし、あなたの人生には苦しみだけでなく、喜び、美しさ、つながり、意味が再び入り込む余地ができる。あなたはもはや強迫観念という狭い牢獄に閉じ込められているのではなく、広大で豊かな世界に住んでいる。
ルーは、海辺で砂の感触を感じ、息子の笑い声を聴き、潮の香りを嗅ぐことができる。彼の人生は、未来への恐怖だけでなく、現在の喜びによっても満たされる。ソフィーは、両親との会話の中で、疑問ではなくつながりに注意を向けることができる。アンソニーは、ジャケットを着るとき、過去の記憶ではなく、風や寒さ、あるいは単にそのジャケットの質感に注意を向けることができる。
彼らは、内面から世界へと注意を拡張した。そしてその拡張こそが、彼らに新しい人生の可能性をもたらすのである。
次の章では、最後のスキルである「価値観に基づいた行動」について探っていく。注意を世界に向けることができたら、私たちは次に「何をするか」を決める必要がある。その指針となるのが、私たちの価値観である。羅針盤と気圧計という二つの比喩を通じて、価値観がどのように私たちを導き、どのように私たちが自分の進むべき方向を確かめるのかを明らかにしていこう。
第9章は「マインドフルネス」または「今この瞬間に注意を向けること」に焦点を当てる。タイトル「Bringing in the World」は、内面的な世界から外の世界へ注意を向けることを示している。過去や未来、内面の思考や感情から、今この瞬間の現実世界へと意識を拡張するプロセスである。
