温存的精神療法を取り巻く現実条件 まとめ 未分類 2026.03.20 温存的精神療法を取り巻く現実条件 目次温存的精神療法を取り巻く現実条件 目次序章 なぜ、いま「回復」を疑うのか――日本社会における不安・沈黙・支援の風景【要旨】 精神科の診察室には、社会の沈黙が流れ込んでくる。本書はその沈黙を解きほぐすことから始まる。「回復」という言葉が当然の... 序章 なぜ、いま「回復」を疑うのか 温存的精神療法20260320序章 なぜ、いま「回復」を疑うのか――日本社会における不安・沈黙・支援の風景 診察室には、外の風が入ってくる。 窓を開けているわけではない。患者が持ち込んでくるのだ。言葉にならない疲労として、あるいは説明のつかない焦りとして、または「なぜ自... 第1章 新自由主義日本という「症例」第1章 新自由主義日本という「症例」――資本の論理と生活世界の疲弊 医師は患者を診るとき、まず「症例」として整理する。 症例とは、個々の症状をばらばらに列挙することではない。発熱・咳・倦怠感という三つの症状が、実は一つの感染症から派生してい... 第2章 金融化される不安第2章 金融化される不安――円安・債券安・トリプル安と国家の自己防衛 不安は、もともと私的なものだった。 夜中に目が覚めて、漠然とした胸苦しさを感じる。明日の仕事のこと、子どもの将来のこと、老後の生活のこと。その不安は、個人の心の中に生まれ... 第3章 なぜ危機は「怒り」にならないのか第3章 なぜ危機は「怒り」にならないのか――超自我化する国家とアパシーの社会心理 フランスでは、燃料税の引き上げに反対する市民が「黄色いベスト」を着て街頭に出た。韓国では、大統領の不正が発覚するたびに、数十万人が広場に集まってキャンドルを灯... 第4章 超自我化する国家第4章 超自我化する国家――フロイト的視点から見た統治と自己責任論 ある患者のことを思い出す。 四十代の女性で、長年にわたって職場でのハラスメントに耐えてきた人だった。上司から繰り返し「お前は使えない」「なぜそんなこともできないのか」と言わ... 第5章 社会的抑うつとパニック第5章 社会的抑うつとパニック――臨床の比喩としての現代日本 精神科医は、個人を診る。 しかしときに、窓の外を見るような気持ちになることがある。目の前の患者が語る苦しみの輪郭が、社会全体の輪郭と重なって見える瞬間がある。これは錯覚ではないと... 第6章 医療・福祉という最後の緩衝材第6章 医療・福祉という最後の緩衝材――なぜここにすべてが押し寄せるのか 「先生、もうここしかないんです」 そう言って診察室に来る人がいる。 仕事を失い、家族とも疎遠になり、行政の窓口をいくつか回ったが「うちの管轄ではない」と言われ続け、最... 第7章 回復モデルとは何だったのか第7章 回復モデルとは何だったのか――反体制的思想としての出発点 一九七〇年代のアメリカに、一人の女性がいた。 パトリシア・ディーガンという名の彼女は、十七歳のときに統合失調症と診断され、精神科病院に入院した。医師からは「この病気は慢性的な... 第8章 回復が義務になるとき第8章 回復が義務になるとき――希望・自己決定・前向きさの超自我化 ある患者が、こう言った。 「回復しなければいけないとわかっています。前向きにならなければいけないとわかっています。でも、できないんです。できない自分が、さらに情けなくて」 ... 第9章 「回復しないという生き方」の倫理第9章 「回復しないという生き方」の倫理――治らないこと、変われないことをめぐって 七十代の男性患者がいた。 統合失調症の診断を受けてから、四十年以上が経っていた。その間、入退院を繰り返し、薬を変え、さまざまな支援プログラムを経験した。症状... 第10章 支援が制度に回収される瞬間第10章 支援が制度に回収される瞬間――善意が管理に変わるとき 一人の精神保健福祉士の話を聞いたことがある。 彼女は学生時代、精神科病院の長期入院患者たちと出会い、「この人たちが地域で生きられるよう支援したい」という強い思いで福祉の道に入っ... 第11章 なぜ専門職は沈黙するのか第11章 なぜ専門職は沈黙するのか――倫理的引き裂かれと燃え尽き 精神科医になって数年が経った頃、私はある上司に言われた言葉を今も覚えている。 「患者のことを社会の問題として語り始めたら、臨床家としては終わりだよ。私たちにできることをやれば... 第12章 回復モデル以後の支援思想第12章 回復モデル以後の支援思想――改善から関係へ、目標から持続へ ある夜、研修医だった頃の記憶がある。 担当していた患者が、深夜に病棟で泣いていた。四十代の女性で、うつ病の急性期を過ぎ、回復の途上にあると思われていた時期だった。私は声を... 終章 それでも臨床を続ける理由終章 それでも臨床を続ける理由――優しさが政治になるとき、席を立たないという選択 精神科医を続けていると、「なぜこの仕事をしているのか」と問い直す夜がある。 解決できない問題が、増えることはあっても減ることはない。制度は改善されるより先に劣...