認知療法と他の心理療法との相違点 CBT


認知療法と他の心理療法との比較

1. 精神分析・精神力動療法との比較

認知療法と精神分析はいくつかの共通点を持つ。患者の感情反応・語り・イメージに共通するテーマを同定する手続きは精神分析的方法に類似しており、また両者とも、患者が直接意識していない信念が行動に影響しうると考える。

しかしながら、両者の間には根本的な相違がある。

第一に、意識へのアクセスしやすさの違いである。認知療法では、患者の苦悩に寄与している思考は深く無意識に埋め込まれているわけではなく、意識的な解釈によって比較的容易にアクセスできると考える。一方、精神分析では、問題の核心は無意識(あるいは抑圧された領域)にあり、推論によって初めて明らかになるとされる。

第二に、焦点の違いである。認知療法は症状・意識的信念・現在の経験の連関に焦点を当てるのに対し、精神分析的アプローチは抑圧された幼少期の記憶やリビドーの欲求・幼児期の性欲動といった動機づけ構造に向かう。

第三に、構造と期間の違いである。認知療法は高度に構造化されており、ほとんどの精神科的障害の治療において通常12〜16週間という短期間で行われる。治療者は患者と積極的に協力して関与する。これに対して精神分析療法は長期間にわたり、比較的非構造的であり、分析家は基本的に受動的な立場を取る。

第四に、技法の違いである。認知療法は論理的検討を不適応的な考えに適用し、行動実験を用いて誤った信念を検証することで偏った情報処理を修正しようとする。精神分析は自由連想と深層解釈によって、解決されていない幼少期の葛藤が封じ込められた無意識の残滓に到達しようとする。


2. 論理情動行動療法(REBT)との比較

認知療法と論理情動行動療法(REBT; Ellis, 1962)は、認知が心理的機能不全において中心的な重要性を持つという強調点と、治療課題が不適応的前提の変容にあるという点、また治療者の立場が積極的かつ指示的であるという点を共有している。

しかし、両者の間には重要な相違点もある。

第一に、信念の概念化の違いである。REBTは苦悩を抱えた個人が「非合理的な信念」を持つと考え、それを直接的な論駁(disputation)によって修正しようとする。これに対して認知療法は、問題となる信念を「非合理的」ではなく「機能不全的」(dysfunctional)と捉える。信念が問題なのは非合理だからではなく、正常な認知処理を妨げるからである。したがって認知療法は「irrational(非合理的)」という語を避け、「dysfunctional(機能不全的)」という語を用いる。

第二に、治療プロセスの違いである。認知療法は患者の解釈や信念を検証可能な仮説へと翻訳し、実証的な検証にかける。患者が自ら信念を問い・検討するスキルを身につけることで、自分自身のセラピストになれるよう教える。REBTは治療者による直接的な論駁を通じて問題信念の除去を図る。

第三に、障害の固有性の捉え方である。認知療法の最も際立った特徴の一つは、各障害がそれぞれ固有の認知内容・認知特異性(cognitive specificity)を持つという考え方である。うつ病・不安障害・パニック障害の認知プロファイルは顕著に異なり、それぞれ実質的に異なる技法を必要とする。一方REBTは、障害に認知テーマがあるとは考えず、すべての障害の根底に「〜すべき(must, should)」といった命令的な思考があると捉える。


3. 行動療法との比較

認知療法と行動療法は多くの共通点を持つ。両者とも実証的・現在中心的・問題志向的であり、問題とその生起状況および結果の明確な同定を求める。

しかし重要な相違もある。

急進的行動主義は解釈・推論といった「内的事象」をできる限り排除しようとするが、認知療法はそれと対照的に、思考・態度・イメージといった内的経験に同様の機能分析を適用する。認知は行動と同様、行動実験を通じた積極的な協力によって修正可能と考える。

また、単純な条件づけパラダイムに基づく行動療法的アプローチとは対照的に、認知療法は個人を環境の中の能動的な参加者と見なし、刺激を判断・評価し、出来事や感覚を解釈し、自らの反応を評価する存在として捉える。

恐怖症に対する曝露療法などの行動技法の研究は、認知的変化と行動的変化が連動して生じることを示している(Williams & Rappoport, 1983; Gournay, 1986)。Bandura(1977)は、認知を変容させる最も有効な方法の一つがパフォーマンスの変容であることを実証している。現実場面での曝露では、患者は脅威的な状況だけでなく、危険に関する自らの期待と自分が対処できないという思い込みにも直面する。体験それ自体が認知的に処理されるため、曝露も認知的手続きの一つと見なせる。

ただし、うつ病患者との臨床研究(Beck et al., 1979)は、望ましい認知的変化が行動の変化に自動的に伴うわけではないことを示している。そのため、患者の期待・解釈・出来事への反応を把握することが不可欠であり、認知変化は前提とするのではなく実証されなければならない。


4. 小括

以上のように、認知療法は他の主要な心理療法と比較して以下の点で際立っている。精神分析に対しては、無意識ではなく意識的・現在的な認知を重視し、短期・構造的な形式を取る点で異なる。REBTに対しては、障害特異的な認知プロファイルを重視し、信念を「非合理」ではなく「機能不全的」と捉え、患者自身の実証的探索プロセスを重んじる点で異なる。行動療法に対しては、内的認知プロセスを明示的に扱い、個人を能動的な情報処理者として捉える点で独自の立場を持つ。


主要文献

Bandura, A. (1977). Social learning theory. Englewood Cliffs, NJ: Prentice-Hall.

Beck, A. T., Rush, A. J., Shaw, B. F., & Emery, G. (1979). Cognitive therapy of depression. New York: Guilford Press.

Ellis, A. (1962). Reason and emotion in psychotherapy. New York: Lyle Stuart.

Gournay, K. (1986). Cognitive change during the behavioral treatment of agoraphobia. Paper presented at the 16th European Association for Behavior Therapy, Lucerne.

Padesky, C. A., & Beck, A. T. (2003). Science and philosophy: Comparison of cognitive therapy and rational emotive behavior therapy. Journal of Cognitive Psychotherapy: An International Quarterly, 17, 211–224.

Williams, S. L., & Rappoport, A. (1983). Cognitive treatment in the natural environment for agoraphobics. Behavior Therapy, 14, 299–313.

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